あっ! 一つに見える

あっ! 一つに見える 

内斜視 見ている位置と実際の位置が異なる

ラトケ嚢胞症、視神経圧迫し起こる視力障害による複視 

このケースでは、かなり強い内斜視が出ていた。

和歌山県 14歳 女性

生じていた不都合

階段の昇り降りが怖くて降りられない。近くも遠くも2重に見える。つかもうとしたモノが見た位置になく宙を掴んだりするなど生活に大きな支障が生じ、黒板の文字や見るもの全てが二重に見え学業・日常生活に困難が生じていた。

検査結果

利き目 左眼

矯正視力 両眼視 1.2

右目 1.2×S-3.50
左眼 1.2×S-2.50C-0.50A10
瞳孔間距離:55mm

斜視のタイプ:内斜視 複視矯正メガネ

プリズム矯正度数 (内斜視)

右目 ベースアウト 9.75⊿
左眼 ベースアウト 9.75⊿

両眼合わせて約20.00⊿プリズム・ディオプターの強い度数である。

どのような度数

ちなみに、このプリズム度数は、1メータ先で像を20センチメータ乖離させる力を表し、遠くを見たときは更に大きな乖離となる屈折力で、このメガネを掛けなければ像が2重に見える、大変な状態であったことを容易に知ることが出来る。

強度内斜視眼鏡加工前
強度内斜視眼鏡加工前

改善策

フレームを必要最小限の大きさに制限し、アイポイントを中心に鼻側を極薄に設計し特殊研磨され制作されたレンズは、上記写真の通り。

レンズ加工の困難さ

レンズ加工を行うレンズ加工機は、レンズ断面が⊿のようなクサビ状であり、一般加工における単純なクランプで両側から圧力が加わるとレンズは薄い方へ簡単にズレてレンズ加工に失敗が生じやすい難点がある。
したがって特殊な治具を必要とする難度の高いレンズ加工で、公開はできないがそれなりの工夫が有って加工が可能である。

いささかでもズレが生じれば度数は簡単に変移し、サイズに合わないなどの問題が生じやすくレンズメーカーも加工を引き受けない現実がある。

ズレが生じれば不良品になり躊躇なくゴミ箱に捨てる以外無い。

ラトケ襄胞による強度内斜視を矯正した眼鏡
強度内斜視を矯正した眼鏡

強度の内斜視矯正眼鏡、ベースアウト20.00⊿
強度の内斜視矯正眼鏡、ベースアウト20.00⊿

レンズの耳側に厚みが出るので、特殊な面取り作業により削り落とし鏡面研磨を施し目立たないように工夫した。

このプリズム度数は、現在のところ一枚のレンズで作れる限界の度数である。更に強度のプリズム度数のものを作ることは可能で行っているが、装用テストの結果必要無かった。

 

プリズム度数の強弱

遠くをよく見えるようにプリズム度数を強めると近くが見難くなるジレンマがある。これは一般に遠くと近くのプリズム度数の入れ方は内斜視の場合V型を描き、遠く用のプリズム度数は強くなり、近く用の度数は弱めに合わせる。

何れかを選ぶ必要があり、このケースの場合学業重視のため実測されたプリズム度数まで強めず、実装させて日常生活や近業が楽な度数に抑えた度数を選択した。

また、近くを見る調節(近見調節)を考慮し、近くを見る時強い調節を必要としない機能性レンズ使用(近視進行予防レンズとも呼ばれている)した。

従って遠用視力は、若干悪い1.0であるが、日常生活など何ら不自由がない視力が確保されている。

矯正後の両眼視力: 1.0 (読書など楽にできることを確認)

 

調整後、ユーザーの声

あっ 一つに見える! (そばで母親が薄っすら涙)

定期点検

1週後 よく見えるようになった。生活に支障がなくなった。性格が明るくなった。

1ヶ月後 学業に支障など無く学友と同じ生活をし視力に何の異常も無く、以前の生活に戻った。

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