QOL改善:フレネル膜からプリズム組み込レンズへ

強度斜視フレネル膜レンズをプリズム組み込みレンズへ
QOL改善 (生活の質を高める)

3年使用した眼鏡(左レンズにフレネル・プリズムフィルムが貼られている)
主訴
「夫の眼鏡がフレネル膜プリズムレンズを数年使用し、膜が剥がれたり汚れて見た目が不潔で、使用している。本人が二重に見える事もありため最寄り数件の比較的大型の眼鏡チェーン店に『プリズム組み込みレンズが作れないか』問い合わせてきた。しかし、どこも『プリズム度数が強いので作ることができない』と断られ、困り果ててネットで検索しやっと当店を見つけた。
使用状況を詳しく聞いた所、購入以来眼鏡の右レンズは拭けるが左のフレネル膜レンズは一度も手を触れられず、とても汚れ不潔になってみすぼらしい。
持ち込まれた眼鏡度数
0.8 X S-2.00;C-1.50A98
0.2 X S-5.75;C-0.75A125 BU 14.25⊿(フレネル膜)
左レンズはビニール製の不透明(強度のため)に加え数年使用で汚れて殆ど見えていない。ユーザーは無意識に左目を閉じていた。
フレネル膜を剥がしてみた(購入以来初めて)

フレネル膜を剥がした
メインテナンスの困難さが原因
黄変し硬くなったフレネル膜(線の部分に汚れが溜まっている)不潔な病原菌の巣窟にもなる

白い紙の上に置いてみたら黄変し、汚れが接着面に及んでいた
フレネル膜プリズムレンズにはいくつかの欠点があります。主なものとして
- 視力の低下: フレネル膜を通して見ることで解像度が低下し、視力が下がる場合があります。
- 外見上の問題: フレネル膜が貼られていることが外見上一目瞭然であり、これを気にする人もいます。
- 経年劣化: フレネル膜は時間が経つと変色や劣化が見られることがあります。
- 貼り方の難しさ: フレネル膜を自分で貼り替える際に、間違った貼り方をしてしまうことがあるため、注意が必要です。膜は水を介して着けるので剥がれやすい。
- メンテナンスが困難:レンズが汚れたり曇ったりした時レンズを清浄に保つことが困難。
作り直した眼鏡

プリズム組み込み累進屈折力レンズ(中近タイプ)
当初持参された眼鏡の斜視矯正は、垂直方向に生じる上下斜視だけでこれに準じて再度両眼視機能検査を行い眼鏡を合わせたが、解像度の良いプリズム組み込みレンズを一週間使用して水平方向に像がダブって見える内斜視が検出されたので無料で作り直した。
新たに作った眼鏡の矯正度数
右目 裸眼0.2 矯正1.2XS-2.75C-1.50A95

上部からのレンズ厚み 概要

斜め左上方からの概要
プリズム度数の概略

上下プリズムの概要写真
上記斜視矯正の値は、上下斜視 15.00⊿ 内斜視 8.00⊿
分かりやすく言うと
1)上下斜視 15.00⊿は 1メートル 離れた地点で裸眼で右目と左目で15cm高さが違って2重に見える。
2)内斜視 8.00⊿は、1メートル 離れた地点で裸眼で右目と左目で水平方向に視線が内側へ交差し分離した距離が8cm生じ2重に見える。
これらの現象が重複して生じている複視を矯正した、現実には斜め方向に分離し2重に見えており、距離が離れれば離れるほど二重に見える度合いは大きく乖離して2つに見える状態を表している。
実際のレンズを見てみよう

レンズだけ撮影
写真は、右と左レンズの20cm程度の背景にある像の高さに差が生じている。目に生じている異常が丁度この反対の状態に生じている訳である。この異常を定量し補正している量がどの程度大きいかを写真で表現してみた。
上下プリズムだけで15.00⊿である。過去の事例では26.00⊿程度まで調整した経験がある。
レンズ制作上の難度
素人目には、レンズを垣間見るだけでは分からない苦労がある。誰でもこのようなレンズは、簡単に加工できると思うだろうが、水平方向⇔に生じるプリズム度数5.00⊿の三角形の断面(専門的にはテーパーと呼ぶ)程度は、最新のレンズ加工機で適宜工夫すれば構造的に対応可能で加工可能だが、上下方向に生じる山稜角(三角形:テーパー)に対しレンズ加工機は対応しておらず度数によるが加工すれば必ず失敗する。上下斜視へのレンズ加工はかなり困難で持ち込まれるプリズム眼鏡で強度上下プリズム加入されたレンズは殆ど例を見ない。
上記レンズは、過去多数の失敗を反省し研究し導き出し解決した結晶とも言えるかもしれない。
レンズ加工にアローワンス(許容値)は、許されないし許さない。
近年レンズメーカーもレンズ加工を有料サービスとして行っているが、引受されないレンズとして強度のプリズムレンズがそうである。クサビの原理と同じ強力な物理的応力が生じるプリズムレンズは、加工が難しくリスキーな為、加工を依頼しても断られる。
クサビの原理
クサビの原理は、「力の集中と変換」を活用する仕組みです。簡単に言うと、クサビは先端が鋭く、広い面にかかる力を狭い部分へと集めることで、より大きな力を生み出します。このようなクサビになっているものを両側から固定しようとすると大きな力が必要になってくる。これを固定できなければ必要とする所定の形にレンズ加工が出来ない。
レンズ外周の鏡面研磨
最新のレンズ加工機には、鏡面加工仕上げが付属して適宜レンズ外周に生じる渦(ゴースト)を改善可能だが、写真の程度まで透明度を高められない。これは手作業によるもので単純に機械加工では出来ない。
フレネル膜の長所は
価格廉価で矯正度数を簡単に短時間で替えることが可能で経済的に安易であることぐらいだと考える。
短所:不潔
水を介してレンズに貼り付けるのだが、メンテナンスの困難さが原因し最初貼られたままで、手で触れるのも拒みたくなるほど不潔になっている場合が多い、言い換えれば雑菌の巣窟とも言える。培養すればいろんな雑菌がでてくるだろう。
プリズム組み込みレンズ
見え方を左右する解像度の良さと取り回しの良さから言えば「プリズム組み込みレンズ」は、剥がれやすいフレネル膜プリズムとは比較にならない優れた長所がある。
組み込みレンズは、高価であるが長期的観点から目の見え方に関わる健康を経済性で犠牲にするのはどうだろうか・・・またこのような衛生管理がしにくいフィルムがもたらす可能性の雑菌感染は、重篤な眼病をもたらす由々しい面があり安全とは言いにくい。
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