【ご相談】2歳の子供がメガネを掛けたがらない
【お問合わせ内容】
「はじめまして。〇〇と申します。息子1歳9ヶ月で調節性内斜視です。2ヶ月前に眼鏡を子供メガネ専門売場で作りましたが、全然してくれません…後頭部と頭頂部にもバンドがあるタイプの物を購入しました。まだ幼いので地道に慣れさせるしかないでしょうか?
11ヶ月の時に内斜視に気づき近所の眼科受診し、小児眼科に紹介状を書いてもらい年始に初受診。2ヶ月前の7月末に2回目の受診で処方箋をもらい眼鏡を新調しました。」
【処方箋】
2019年07月16日
右 S+2.25C-0.50A180
左 S+2.00
瞳孔間距離(PD)42mm
【装着状態】レンズ光学中心を囲むように中心チェック・シールを貼った。
不都合点の説明
分かりやすくするためいくつかの基線を写真に引いた。
赤い線:テンプル(眼鏡の腕)の向く方向が上下に乖離している為上記装着状態のように眼鏡枠が左上方へ歪んで掛かる原因に成っていた。
なぜこの様になったかは不明である。考えられることとしてフレーム装着時「後頭部」と「頭頂部」にもバンドがあるタイプのため「強制性」が強く装着に3分ほど掛かっていた。丁番部分が金属製で捻れていたのでお子さんが無理やり眼鏡を外そうとした折に曲がったものと考えられるが、不明である。
目の中心とレンズの光学中心は下の写真のように両眼で合っていない。
右目 A瞳孔中心位置より5mm上方にレンズ光学中心が位置する
右目 B瞳孔中心位置より10mm上方にレンズ光学中心が位置する。
中心の不一致により生じた不正プリズム
右目に生じた上下プリズム BU(ベースアップ基底上方)1.00⊿
左目に生じた上下プリズム BU(ベースアップ基底上方)2.00⊿
本人側から見た像は左目に垂直方向に2.00-1.00=1.00⊿の不正プリズムが生じる計算になる。見ようとする像は1m離れた位置で右目1cm、左目で2cm像が下がって見えるということになる。仮に両目で見えると仮定した場合、右左で像が右左の高さが異なり強い違和感、場合により像が上下に2重に見える状態が生じる。
この状態で遠くを見た時、像のズレは更に増幅され、突然このようなメガネを掛けた場合目が痛く掛けていられない、継続して使用すると頭痛になる。更に無理やりこのようなメガネをかけ続けさせた場合、予期せぬ後天的上下斜視を形成してしまう恐れがある。
相談のため訪れたお子さんと少し相手をしたが、小生のハイタッチリクエストに機嫌よく応じてくれるなど普通のお子さんだった。
フレームの選択の誤り
お母様の話では、「7月の処方された同日、自宅から通いやすく便利な子供メガネ専門売場に訪れ眼鏡購入されたがフレーム試着もほどほどに、本人が簡単に外せず、投げても壊れにくおそうで、ズレにくそうな「後頭部と頭頂部にもバンドがあるタイプ」を選択した。フレームの色も肌色に近く違和感が少なかった。幼く顔も小さいのでサイズ的に選択肢があまりなかった。」
したがって処方後メガネは使っていないためなんの進展もない状態であるとのこと。
結論
赤ちゃんと変わらない難しい年齢だが、最初の眼鏡導入に失敗していると考えられる。この年代の来客が多いが、眼鏡の装着は基本的無理強いせず、短くて1週間~1ヶ月ほど嫌がるなら自分で眼鏡を外すのを自由にさせ、頃合いを見てまた掛けさせる繰り返しを保護者が行い、やがて本人がよく見えると分かれば自ら眼鏡をかけるまで気長に待つのが一般的である。しかしこのケースでは小生の考えでは、強制性の強いバンドと何らかの扱いに依る中心の狂いに依る見え方の悪さから掛けさせようとする行為が一定のトラウマを作り眼鏡装着を忌避させていると考えられる。
解決策
先ず子供の眼鏡トラウマ、眼鏡に対する恐怖感など取り除くケアーに留意しながら圧迫感のない、嫌なら自分で自由に外せるフレームの選択。意外と子供の力は強くこれに耐えうる強度に富むフレーム選択。気長に眼鏡を根気よく掛けさせ眼鏡装着すればよく見える事に気づかせ慣れてもらう。
光学中心を正確に合わせ目の中心と一致するか指導し、保護者確認で目とレンズ中心の一致に心がけ、不快な不正プリズムが生じないよく見える使い方をさせてあげる。
眼鏡制作
その後12月17日小児眼科で再診後必要とする眼鏡度数は前回と同じ度数で良いということで、眼鏡調整依頼を受けた。
度数
右 S+2.25C-0.50A180 (遠視性乱視直方向)
左 S+2.00 (遠視性)
PD 42.0 (瞳孔間距離)
フレーム
レンズ
仕上がり重量
フレーム+レンズ合わせて11.0g
その後の経過
本人が注視すると左目はやや鼻側に落ちているが測定された目の中心位置にレンズ光学中心が合っていることが分かる。
お母さんからのメール 2019/12/27 (金)
【ビックリ!(笑)】
「さっき近所の祖父母宅にも掛けて行きました!褒めてもらってました!それから動物園にも行ってきました!私もダテメガネしてます。根気強く頑張ります!」
メガネを掛け始めて頂き、少し紆余曲折があったもののようやくこれから弱視治療など出発です。
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