緑内障の苦しい見え方と改善
一般眼鏡店と異なる手法と対策例、ご参考になればと願っています。
ユーザーの声
「単に眼鏡だけに頼らず、今回合わせた単眼鏡や拡大鏡など、自分の目が見えなかったら見る対象物を拡大し見えるようにさせる方法などがあり、常に希望を持ち諦めず働きかけることが必要だと思います。」
同じ苦しみで悩む方々へ少しでも参考になるようとの強いご意向で発言されています。
ユーザー
埼玉県ご在住 男性 40代男性
既往症
緑内障 ステンレスステント挿入眼 アトピー
治療・手術歴
主訴
全般的に見る物全般が白く光る感じで眩しい。
一番困っているのは、右眼で見ようとする位置に黒い一線(暗部)が見えて邪魔になってしかたない。(押し下げるか上に押し上げるかしてほしい)
病歴
両眼 人工水晶体挿入眼 緑内障 ステンレスステント挿入眼
初診 平成26年11月26日
視力 : 右0.15(矯正視力0.8) 左0.05(矯正不能)
近くが極端に見難くなっていった
2014年12月 以後数回の手術後
視力 裸眼 矯正 矯正眼鏡
右眼 0.02 0.03 +4.00
左眼 20cm/CF 不能 -
(CF=counting fingers、表記法:視力距離/指数弁、この場合20cmの距離で指の数が言える程度の視力、
手の動きが確認出来ない場合、暗室で光の点滅が確認できれば、光覚弁(LP=light perception)、光覚弁が確認出来ない場合視力はゼロとなる。CF-LP-0)
ご希望
今以上に見える眼鏡がほしい。
パソコンで拡大したポイント数の文字をパソコンで読めるようにしてほしい(現在読み辛い)。普通の書籍新聞の活字が読めるようにしほしい。
注意点と対策
断定は出来ないが使用中の眼鏡では度数変化があり見えにくくなっている。遠視が強くなっていることは・・・後の屈折検査で、強めの遠視が測定された。過去に行ってきた「プリズムで像を変移させる」手法で視線方向に見えて邪魔になる暗部をプリズムで押し下げ快適に見えるようにする。
ロービジョン定義
現状の見え方はロービジョンに該当。世界保健機関 (WHO) は、矯正眼鏡装用しても「視力が0.05以上、0.3未満」の状態をロービジョンと定義しており、これに準ずる対応方法となる。
測定
中距離用
度数
右眼 矯正視力 0.2(当初測定時)S+800 BU 7.00⊿ (暗部を押し下げる)
左眼 耳側上方に視力残余するも矯正効果が見られず、体裁を保つため右目と同度数。
右目の暗部をプリズムを使って通常の見える位置から押し下げ暗部を避ける調整、本人が楽に見える位置まで度数を増加減した。
現在までの状況
使用中の遠用眼鏡度数は、左右ともS+4.50で遮光レンズ使用し両眼(右眼で見ている)で矯正視力0.02程度しかなく矯正効果が認められない、掛けても掛けなくても同じ、その為ユーザーは眼鏡を殆ど使用していない。
矯正後
矯正視力は 最初殆ど見えない程度の0.02 から 矯正視力 0.2 へ改善できた。
改善点
1)屈折度数
S+8.00で遠くとパソコン程度の距離のものがよく見えるよう改善した。近見矯正視力は従前の0.02に比べ我々の感覚では良い視力とは言えないまでも0.2の視力は、本人の感じと表現で「人の顔の輪郭など格段にハッキリ見えるようになった」という。
被検者の反応: 今までに比べハッキリ見える。
40cmほど離したパソコンの文字が見える。
2)暗部移動
右眼で見ようとする位置に黒い一線(暗部)が見えて邪魔してストレスになっていた。プリズム度数を変えながら、本人が見る暗部を上下左右に変移させ確かめ更にその移動量決め、快適に見える位置へ変位するプリズム量を測定。この結果 邪魔な暗部が見えなくなる度数が 7.00⊿プリズムディオプターであった。
3)羞明感
眩しさは、短波長のブルー光が眼内乱反射に依るグレアーによる。これを減光もしくは遮断することにより羞明感(まぶしさ)の改善を行った。
おおよそ、屈折度数と暗部変移により正面で見れるよう度数確定。
・・・・次、近見対応
4)近用ルーペ 手元の文字 読書など (倍率5倍使用)
上記眼鏡使用し拡大鏡5倍を併用することで一般的文字がなんとか楽に読める。ただし拡大鏡が高倍率のため焦点距離を常に一定に保たなければ目が疲れ読書などの目的に使うことが出来ない、書籍上スライド移動できるLEDランプ内臓の固定焦点のルーペを選択。
その他のロービジョン対応グッズについて一通り説明。
なかんずく視度可変の単眼鏡を外出時併用することをテストし、使えることを確認。
単眼鏡が使用できれば、ユーザーが普段困っている「近くの文字群」から駅に吊り下げられている時刻表まで視度が可変なので色んな場面でかなり明瞭に見ることが可能であることを店内や店外に出て使って確認。
単眼鏡は、目に乱視や近視・遠視があろうと無差別に見ることが可能である。この場合眼鏡などを介さず直接裸眼で単眼鏡を介して見ることができる。ただし各種倍率があり、過度に大きな倍率のものは僅かな手ブレで見えるものが動いてしまう為、目的や生活習慣を聞いて適宜決める必要がある。
眼鏡制作
持参されたお気に入りのフレームを使用希望されたので、レンズのみ当方で準備し加工取り付けることにした。
ブルー光が原因する眼内乱反射による眩しさ改善
ユーザーが訴えた「目に映る像が白っぽく見える」現象は、青色光(ポテンシャルの高い短波長光)が眼内で乱反射しグレアーを引き起こす事によて起こっていた。ブルーカット・コーティングによる効果は、目立つほどの改善効果は無いが、真空蒸着膜コートで20%程度のブルー光をソフトに除去可能でこれを採用。
(このようなレンズのブルーカット効果を売り込みのため70%除去などと誇張する眼鏡店従事者がいるが、視感や測定では18%程度の効果しかない。筆者も使用しているが程度の減光に過ぎず、期待を満足させるような誇張した効果は無い。)
晴天時生じるまぶしさ=太陽光による羞明感を和らげるためには上記コート程度では明らかに不足する。このため更に乱反射を引き起こすブルー光の反対色オレンジ色の遮光クリップオンを眼鏡上に装着併用することにした。遮光レンズは、ブルー光を吸収する反対色のオレンジ系の色合いで吸収するのものである。
レンズ厚を薄くする
屈折度数が、比較的強度の遠視性のためと、目に見える暗部を避ける目的のプリズム度数は比較的強度のため無造作にレンズメーカーに口頭指示では、異様な厚さのレンズになってしまう憂慮が有った。
このためフレームをユーザーに装着させた上、自覚検査で視線経由点をフレーム上に捉え、これに基づき座標を計測し、フレームの形状を測定機に読み取らせ、総合的に最大限レンズが薄く仕上がるようコンピューターで模擬計測の後レンズ発注した。出来上がりは以下のとおり。
レンズの形状説明
レンズの端っこをエッジと呼ぶが、ナイフエッジ:レンズを極限まで薄くしたため、ナイフのような鋭利な鋭角を持つレンズに仕上がっている。
加工に際して、強い遠視性屈折度数に加え、7.00⊿の強いプリズムのレンズは、断面図で見た場合、クサビのような三角形を構成する。レンズ加工機にクランプする際レンズがスリップした場合、予期せぬ形状にレンズが出来上がる場合がある。
実際このケースでは加工失敗した。再度レンズ発注し作り直しが余儀無くされた。筆者が独自考案した加工治具使用してもこの様な場合がある。治具がなければレンズ外周加工で失敗する。加工難度の高い作業である。
レンズの色
写真からお気づきかと思うが、レンズは若干黄ばみが有るがブルーカットコートによるもので不良品ではない。
未加工のレンズの仕上がり具合
レンズ外周加工を終え眼鏡フレームに取り付けた。遠視性レンズは、外周部を鏡面研磨加工しなくとも渦やゴーストが立つことは無い、しかし眼鏡をより完成度の高いものに作る小生のこだわりであるが、外周部を切削したままの白い跡形を残すとレンズの外観が分厚いレンズだということを強調してしまうのでそれに対する対策。
レンズ取付加工後の概略
フレーム上部からの概要、レンズ上部はプリズムのため厚みが生じている。この度数でこの程度の厚みであれば、自己評価ではあるが、比較的よく出来たと思う。
フレーム上部からの概要
フレーム下方部からの概略
フレーム下方部からのレンズ厚、写真では解り難いが、レンズの耳側両側は大変薄く仕上がっている。
眼鏡装着
付属アイテム
遮光クリップオン、拡大鏡、単眼鏡
1)遮光クリップオン
遮光レンズで出来たクリップオンレンズ
LEDランプ内蔵固定焦点拡大鏡
単眼鏡
あとがき
緑内障や黄斑変性症などの眼病で悩む方々の苦しみは筆舌に尽くしがたいものがある。様々な症状の苦しみとストレスに対して一般眼鏡店では単純対応が多い中、筆者も稚拙で足らない知識技術なりに編み出した方法で少しでも困る方々のお役に立てればと常に願っている。
これら記事は、症状が進行してしまい、暗点や暗部が生じ、加えて視力が落ち視力で苦しむ方へ少しでも希望やご参考になればと考えている。
症状や見え方など、個々人により様々で決まった方法というものはない。お困りの方は諦めず常に希望を持ち、探せば何らかの方法・手段があるカノ生がある。決して諦めないこと・・・これに尽きると考えている。
ユーザーから読者へ発信 (ユーザーの主張)
私と同様に見え方でお悩みの方へ
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