眼鏡とQOL
(クオリティ オブ ライフ)
目とレンズ中心が全然合っていない例
ユーザー
51歳 女性 営業職
眼鏡需要
高齢化に伴い人口構成で老眼人口が増え遠近両用メガネを掛けている方が大変多くなりました。
このような機能性レンズは、大前提として目とレンズ中心が一致することによってレンズの持つ便利な機能性すなわち遠くと近くが無段階に見やすくする能力を持ちます。
しかしレンズは透明でありわかりにくいが眼鏡店はメガネレンズ中心と目を合わせてくれたと信じる方がほとんどです。しかし現実は、上記写真のようにレンズ中心が目と合っていない状態でメガネを掛けている方が大変多くなってきています。
同業ですらこんな状態
このケースは、我々の仲間というか眼鏡を生業にしている同業、普通一般ユーザーはどうであるか?推して知るべし。最初一見し目の位置(眼位)が眼鏡と合っているか疑問を感じメガネの中心などの状態をチェックをしてみた。
自己申告で目の眼位が変なのは、メガネによるものか先天的なものなのか因果関係は不明。
しかし目とレンズ中心が合わない場合眼位を変化させる場合もある。
いずれにせよ、視力測定をした結果、外斜位と上下斜位が検出された。
写真から説明
使用中の機能性レンズの中心が目と合ってない
分かりやすいように
写真に補助線を入れたので、簡単に目とレンズ中心が合っていないことを写真から一目で見て分かる。
角膜頂点の反射点が目の中心ということになります(撮影角度により多少変化する場合もあるが、このケースではほぼ目の中心を表しています)。
写真を分かりやすく
角膜頂点を基準に白い補助線を入れその交点が目の中心。
レンズに有る隠しマークを基準にレンズテストシールを貼り求めたレンズ中心は緑色の窓部分、緑窓の中心を赤い補助線を記入。
原則
レンズを加工する眼鏡店に課せられた原則。白と赤の交点が一致させるよう眼鏡店言い換える眼鏡技術者は合わせる必要がある。だが出来ていない。
中心を合わせる目的と理由
レンズにデザインされた中心、累進屈折力レンズは多様な視線方向にピントを合わせるための機能性を生じさせるための中心。この中心を合わせて初めてレンズメーカーが研究し意図したレンズの機能性が活きてくる。
レンズをフレームに取り付けると「遠く」やPC作業等の「中距離」や「近業」の細かい文字を読んだりできる目的を可能にする機能性をレンズメーカー達は意図しデザインし各種のタイプを提供している。これら機能性を活用させる機能性を使えるようにするため、レンズの中心を厳密・正確に目に合わせる理由がここにある。
問題点
従って、赤い線で交差した点は、レンズの中心であるが、使うユーザの目の中心=白い交点まで移動しないと機能性レンズ=遠近両用レンズ(累進屈折力レンズ)は、機能しなくなる。レンズの持つ様々な距離すなわち遠用~近用までのそれぞれの視点距離に合わせた目の内寄り(輻輳)や度数によるピント合わせ=調節が機能しなくなる。言い換えるとこの様な眼鏡は、対価を払った値打ちのないガラクタになってしまう。
安かろう悪かろう
チェーン店など従事者の質は均一でなくユーザーの品質に対する免罪符は価格や作り直しで免れようとしているのではなかろうかと感じている。価格訴求=価格競争が激しく、量販に迎合するレンズメーカーや生き残りをかけた既存眼鏡小売店まで乱戦混線状態で今日中心の合わされていない不良品を分からず掛けているユーザーといった構図がこの業界にあり由々しい限りである。眼鏡は店や企業が作ると思われがちであるが、一人一人の人=従事者の個別の作業である。今や手間と人件費のかかる調整技術は軽視され乱売が巷で横行していると感じている。
よく見えないメガンを持参され相談に来店されるユーザーの話などでよく聞く話で「安かろう悪かろう」と消費者の善意というか勝手に納得している。しかし事大切な目や視力に関わることであり、話を聞くと「お金の問題ではない」・・・
フレームを歪めると
このようなレンズ中心は、日々の使用でフレームを歪めたりすると徐々にその整合性(中心不一致)を失い見えにくくなる、定期的な点検調整の必要性がここにある。
改善方法
ではこのレンズどうすればよいか?この写真のような程度に合わないものは調整程度の話ではなくでは改善方法はない。残念ながら捨てて、新たに作り直す必要がある。
本人は気がついていない(それが一般的で問題)
このケースの場合、単純な中心不一致だけでなく更に高度な両眼視機能検査を進めた結果「斜位」が生じていた。レンズが原因か?先天的な形質が原因かは不明。
検査の結果、内斜位と上下斜位の複合斜位が生じており、同時にレンズの度数も合っていなかった。
良く見える眼鏡をかけた経験がない
ご本人は、ただあまりよく見えない位の程度の感じで何が原因か気がついていなかった。眼鏡業界者と言えどよく見える眼鏡を掛けた経験が無く比較するものがなく「遠近両用とはこんなもの」だった。メガネを掛けると裸眼でいるより「良く見える」ので掛けていたわけである。
当方で検査して「初めて気がついた」ということだった。一般に見え方についてよく見える、自分の目によく見える経験がなければ与えられたもので少し見えれば満足し、比較するものがないから何を与えられても気がつかない。
測定結果
測定結果から、次の視力矯正を行えば 左右とも1.2 両眼矯正視力 1.5
度数
右 S+1.00C-2.50A170 基底外方 1.50⊿ 基底上方 0.75⊿
左 S+1.25C-1.75A20 基底外方 1.50⊿ 基底下方 0.75⊿
瞳孔間距離 61㍉
斜位タイプ
複合斜位 (内斜位と上下斜位) 両眼視機能を有し、立体視可
メガネを掛けた状態
両眼においてベースアウト(内斜位矯正)の状態・・・
眼がレンズに合わせたのか不明、いずれにせよ内斜視と上下斜位が複合していた。
掛けてみて
テストレンズで矯正し試したところ・・・
「わっ!遠くも近くも、ホントよく見えます」(これはお世辞抜きの話)
でした・・・
迷い
斜位が有るということは、心理的に「ショック」だと言う、メガネやレンズを新調するかどうか迷い。
結論
同業同士の取引で作られ持ち込まれて検査したメガネですらこの調子。
一般眼鏡店で生じている隠れた実態と散々な眼鏡実情は、あなたの想像に難くないと思います。
いろんな事例をこのサイトでは掲載していますが、このような状態のメガネ実例はあなたの想像以上にたくさんあります。
どのようなお店で同様の問題が頻発しているか詳細に伺って記録しています。大変な事 (-_-;)
QOL クオリティ・オブ・ライフ
一度よく考えてみて下さい。
見えるということは命の次に大切な目に関わることであり、色んな眼病、なかんずく加齢黄斑変性症のため視力で困っている方々と日頃接していて、眼鏡を合わせて見えるということは逆に本当に目で困っている方からすれば、幸せなこと。
それは奇跡と同じとも言える。
メガネはモノとしてお金で高いとか安いとか評価されがちだが、しかし我々が提供する眼鏡は、神経を研ぎすませ心血を注ぎ一つ一つ目に合わせて作る2つとして同じものがないオーダー品。
人との関わり合い
知識経験などを持つ「人」が持つ目に見えない無形のものの関わりが大きく、方や日常の使用で簡単に中心が変わる=見えにくくなる側面を持っている。定期的管理を必要とし、またレンズは透明であるがゆえ「商品透明性に悖(もと)る」アイテム。
裸の王様
自分の眼とレンズの中心が合っているかどうか?手渡し時、レンズ中心の目との一致を自分の目で確認した人は殆ど100%いない由々しい現実がある。
言い換えると、メガネ・ユーザーは 「裸の王様」である。
これは数十年この生業に関わって来た小生の感想。
本人が気づいていないだけで、今かけているメガネ以上に快適によく見えるメガネとの出会いがあればもっと良く見えるかもしれない。
そう願っています。
最後に
クオリティ・オブ・ライフ(英: QOL quality of life、QOL)
ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質が、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出すのに役立つか?
視力はあなたのQOLに大きな関わり合いを持つ。
安売りメガネで目先のお金がどれだけ経済的に節約できるかなどと大切な目の視力とは無関係だと思う。視力の節約では困る。
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