日本眼鏡学 学会発表 星野龍一

日本眼鏡学 学会発表 星野龍一

 

IXON(イグソン)Ver7.01 額帯式自他覚視軸測定記録装置

メガネユーザーに不透明な光学中心の一致確認をする手法と視軸とレンズ中心を他覚・自覚で眼鏡デモレンズに記録する装置の紹介

オプティカルデザインホシノ 星野龍一

IXON(特許庁 商標登録第4557820号 所有権:星野龍一)

特許登録 第3363425号

はじめに

 「眼鏡枠上,目と左右レンズ光学中心一致」は古くとも未解決の課題である。過去数多くの試みがなされてきたが,ユーザーが日々使用する目的フレーム上「画龍点晴」を行う為の眼鏡店・消費者の両者が満足する手法・装置は確立されていない。

 透明な中核品質すなわち光学中心と目の一致は,販売現場において手によるアイポイント取りに頼っておりその時々で安定せず,さらに顧客確認のない不確かなものである。特に近用眼鏡等の近用視軸測定は,難しく殆ど測定されていない。

 ユーザー視認言い換えれば,小売店はユーザーの目とレンズの中心位置確認をしていない。レンズが透明な為ユーザーに説明が困難なため,著しく商品の透明性に悸り,説明不足と手段の欠落が原因で,巷には視軸とレンズ中心が不一致な眼鏡が多見され,眼鏡店の手による品質は著しく安定を欠いたものである。この透明な光学中心を以下に説明する低廉・実行可能なシールを貼る事で視覚化し,眼鏡に関係従事する者と消費者の両者が商品の透明性を高め正当な利益を享受するため,多様な人体特性を的確にキャンバスたるデモレンズ上に抽出し加エデーターとなし,眼鏡技術者の誰もが容易に消費者に適する眼鏡を製作可能にしようとするものである。

 元来消費者の希求する眼鏡は,何かを原点復帰し見つめ直せば,歓迎され正しく受け止められる技術関与の分りやすい説明理解には【解】が認められ,多量販売競争に頼らない確実・順当な技術評価に対するユーザーが見て分る対価即ち付加価値向上に繋がると考える。

 光学中心を視覚化することは,光学中心と言うブラックボックスのまま自己終結させずユーザーに開示し分るようにするインフォームド・コンセントである。レンズ中心に対する説明不足をユーザーの目視により補い応用して,中心一致による元来レンズの持つ特性と機能により,安全かつ快適な視力を可能にしようとする。予期しないプリズム等により筋性眼精疲労等を予防し,中心一致によるレンズ機能をフルに引き出し快適性や商品の透明性改善などが可能になる。

 各社各様に開発される新レンズ等は,小売店に任される「中心一致」が全ての【前提】であり,この点が確保されねば全ての試みは無為に過ぎない。装置及び同技術導入は,単に人の目とレンズ・フレームを適正統合するに止まらず,レンズ中心の視覚化によるユーザーの検知は,継続する自律的な品質向上を促すことが可能である。

 

 問題考察

 ① 一般に消費者は「レンズの何処で見ても同じように見える」と錯覚し,一方小売店は誤った営業の摺込み,ロコミで「非球面レンズは多少の中心ズレ(合わなく)も耐える』と根拠無く信じ拡大解釈し中心一致を軽視傾向にある。

 ② 小売店などにおいてユーザーに「明確なレンズの中心の消費者確認」すなわち品質提示が無く,公正な消費者利益が保たれておらず,また確認方法等は樹立・普及していない。

 ③ 眼科処方は度数とPD直線表記で患者視軸 は遠用・近用だけで患者の視軸はあまり加味されず,快適な視力補正に必要補完する生活習慣や個人の癖を取り入れ使用する眼鏡枠に視軸中心を記録しなければ,目的が大分別され直線PD表現だけでは,具体的な眼鏡製作に情報不足と思われる。

 また事後の眼鏡検査はレンズメーター測定結果と処方値か合致すれば良とする場合が多く,診療現場で患者の眼鏡枠を経由する視軸と光学中心の一致確認されることが望まれる。また強い不同視で眼鏡全体が上下する場合,左右間のレンズの度数差と距離により生じるプリズム差が余程大きくなければ見落されやすい。

 ④ 小売店製作する近見眼鏡(老眼鏡)は,伝統的で根拠の無い単純なデータムライン又は遠用アイポイントより左右夫々内寄せ2mm,下方2mmの所に光学中心を位置させるケースがほとんどである。またユーザーの近見融像位置が眼鏡枠のどこに位置するか確認していない。強い不同視の近見処方された眼鏡は,光学中心が視軸上に位置されねば生じるプリズム差により目眩や苦痛を引き 起こし,新聞書籍の読書をする文化的生活から隔絶を余儀なくされる場合がある。

 ⑤ 長年眼鏡製作に従事するなか,眼鏡枠上何処を視軸が通過するか眼鏡店に適切・有効な測定 装置がなく,人の見る視軸はコンピュータをいくら利用しても本人以外知る事が出来ず,目的とする眼鏡フレームのリム空間に適切に記録可能な装置がない。

 ⑥ 累進レンズは,遠見と近見間の累進帯長が11~24mまで様々あるが付属のゲージシールを用いユーザー確認しても,ゲージが各メーカーにより異なる固定デザインであり,自由な被検者固有の輻輳・融像位置を確認できない。ミラー法は検者・被検者間で見る角度と距離(鏡からの距離は倍)により常に変化し不安定な外観検査に過ぎずこれに加えてフレーム上被検者の自由な姿勢や癖などを加味する近点融像視軸通過点を確認できない。実装フレームに記録が難しい。

 累進帯長が何mmになるかの判断は被検者が首を動かしたり目の向きを変えたりなど確信を持てず、照明の付いたミラー法は使用しなくなる傾向にある。(編集部注:ミラー法は,検者と鏡間の距離は全く測定に影響しない。被検者と鏡の距離が大切。)

[図1 測定の原理]

 ⑦ 眼鏡は両耳の高さ,鼻の形,眼の位置など大変多様性に富み,一方眼鏡をかけるユーザーの顔の向く角度やイメージ・バランス,また多様なフレームデザイン等が複雑に要素として絡む。手順からフレーム決定時レンズ加工前に調整し、次にフレーム上ユーザーの他覚的アイポイントを取り,ユーザーの目に合わせレンズフチ加工するが,一般眼鏡店では未だ多くが旧来の人の多様性と無関係な機械的左右対称なレンズフチ加工を施すケースが多く,誰も予期しない余計なプリズムが処方され眼鏡をかけると目が疲れやすいなど困惑するユーザーを多く見る。

 

 完成眼鏡の検査

 眼鏡レンズ上左右の光学レンズ中心をレンズメーターで中心印点し,窓開き印刷されたシールで中心を囲む等距離位置に貼り透明なレンズ中心を視覚化する。検者は被検者の顔に装着させ外観検査で容易に中心確認ができ,また被検者は着色された同心円の窓を通し見て彼の視軸中心上に生じる一つの融像円を正面に見て自己確認が可能になる。さらに左右眼を交互遮蔽し被検者が一時記憶する高さの左右一致を自覚検査確認すれば光学中心が視軸上同じ高さに有るか確認可能である。

 考案した装置は,頭部にバンド固定し,バンドから派生させた測定部は,自覚及び他覚測定を可能にするターゲットを表裏一体構成し更にその上下に2個シール貼付装置を持ちレンズ側にシールを押し込む記録装置で構成されこれらを具備する測定部全体は同一円周上を公転・定位置停止する。

 この測定部には検者の見る「他覚」は白色,被検者が見る自覚は「オレンジ色」の各々同心円の内側に透明な窓を持つ。装置は装着する眼鏡フレームやテストフレームの前に位置し測定使用する。

 レンズ前でターゲット即ち仮想光学円を自由に移動し両眼視の融像視位置と距離を測定する。

 上下のシール貼付装置は遠用と近用を同時に測定記録可能にする累進及びバイフォーカルレンズ等への利用を考慮し設計した。記録されたデモレンズ上の遠用と近用視軸間を距離計測すれば,被検者が生活習慣や癖など自然姿勢で見る遠近間の高さ計測ができ,併せて幅輪偏位を立体計測できる。

 さらにこの測定は単にメーカーが望む累進夕イプ決定に止まらず,レンズ加工技術者が加工に必須な眼鏡リム空間のレンズ中心位置情報提供を目的とする。

 

シール

 仮想光学中心シール(これ以降シールと呼ぶ)。上記自他覚測定の後実装枠デモレンズ上に貼付し記録する。被検者は予想される光学中心を視覚化し,事前確認でき,検者も再度検査確認や微調整が行える。測定による位置情報に基づき加工されれば,眼鏡製作後左右加工済みレンズの中心にシールを貼って,被検者はシールを通し融像円を視軸方向に確認出来る。最終手渡し前のフィッティングにおいて融像円を通し検者は,被検者の自覚で見た融像円を質問回答により,レンズ取り付け後等のフレーム歪による僅かな中心ズレ修正が暫時微調整できる。

 シールは,既に製品化されて販売できるが,すぐに実証実験を希望するならば累進焦点用ゲージシールの窓開き部分を任意切り取り利用すれば,即時に試験可能である。

 

 解決される点

 ① ユーザーの求める眼鏡枠上に装着イメージ,頭部の多様性,眼位,度数,光学中心など諸条件が全て凝縮される場所は,キャンバスたる装着眼鏡枠である。この眼鏡枠上に「画龍点晴」をなし目とレンズの中心一致を行う装置がIXONである。

 ② 第三者検査,制度基準に頼らずとも左右レンズ各々の光学中心上に仮想光学シールを貼る事により,商品透明性に欠ける基礎的レンズ品質を消費者に品質確認にする事により,販売側のフェイルミスを未然に自律防止し消費者利益を確保できる。特に多人数で行われる販売業務における顧客を相手とした品質管理は経営上必須かつ有効である。顧客の歓迎する健康被害予防と同時に眼鏡の品質・快適性を確保できる。

 ③ 本シールによる顧客による自覚検査は軽微な差を感知し,高精度な眼鏡製作を可能にする検査導入となる。消費者への商品透明性は,時代の強い要求で有ると共に物的価値に加え技術関与の重要性を認識せしめ,「見える無形技術」すなわち正当な対価である付加価値により今までと異なる新しい利益向上と繁栄が可能になる。廉価なシールは,実行・普及が容易でシールを貼り行う自覚・他覚による視軸検査はユーザーの理解を促し,測定者のミスを防止できる。

 ④ インフォームドコンセントを伴わず相互確認が無い手作業によるアイポイント作業は,消費者利益を満足できない販売側ブラックボックス中の自己終結であった。自覚検査を伴う本測定検査は被検者に新しい自己固有の融像円を見て品質確認できる体験をもたらし有益である。また,従来のアイポイント作業により近見視軸を捉える事は,事実上不可能であるが装置を使えば測定・記録を確実・容易に行える。

 ⑤ 人の視軸は,被検者以外知る事が出来ないが,仮想光学円を提示しその位置の適否を答える事により,眼鏡枠上通過する視軸位置をデモレンズ上に記録し計測可能にする。

 ⑥ 遠見及び近見視軸を測定し,実装眼鏡粋上に記録された位置測定を行えば累進レンズの累進高さを具体的に技術者は見て知る事が出来,適切な累進レンズタイプ選択に役立てられ,フチ加工の中心基点を求められる。またこの装置による視軸測定は顎台に乗せて測る固定的なもので無く,被検者の自由な首運動や姿勢を総合網羅的に取り入れられる利点が有る。最新型累進レンズのデーター抽出提供に関しメーカー側の研究利用要請は協力を惜しまない。

 ⑦ 実装フレームは,ユーザーの諸条件が総合網羅的に反映されるキャンバスで,この上にIXON装置でユーザーの見る視軸方向に融像円をシミュレートし,同一位置をデモレンズなどに転写するため視軸とレンズ中心に狂いがなくプリズム発生が少なくできる。

 

 遠見測定(要点のみ)

 ① 前準備フレーム:装着-フィッティング装置準備:記録シール取り付けーオートレフなどPD(水平距離)測定値転写 

 ②確認,フィッティング済みフレーム装着-IXON装置のベルトを締め頭部装着及びクランプ(検者は,顔全体からバランスしていても,枠下端を見た時高さが違う等,実用位置とイメージのどちらを優先するか矛盾点等事前了解を得る)

 ③ 前眼部瞳孔中心観察丿白マーカーを中央取り付け部に繋がるシャフトを左右移動調整

 ④ 白色マーカーの上下高さをノブ回転により上下移動調節,ココまでは検者による他覚測定 

 ⑤【自覚測定】被検者に5m先を楽で自然な姿勢で見ようとする具体的位置を見させ(遠見については5m先の地面を見させると言う意見もあるがどの位置の視標を標準にするか研究余地あり但し近見は通常ある程度特定できる読書位置などを見させて位置特定可能),融像円か一つ正面に出来るか質問し正面に来るようノブを回し微調節

 ⑥左右の高さ調整,左右の高さを遮眼子で交互に見比べさせ同じ高さになるようノブで微調整

 ⑦【記録】測定部をラチェット停止位置までまわし,記録用のシールを被検者に負担が掛からないよう検者は正面から人差し指を眼鏡フレームの裏側に当て,親指で両方の記録用ノブを押し込み,シールをデモレンズに貼付する。このときシール押し込みシャフトはデモレンズに対して垂直になるよう水平移動シャフト固定部のネジ固定、同時にフレーム傾斜にも留意する。

 ⑧測定記録作業後、装置を頭部から外し、続けて装着する測定記録済み眼鏡枠状デモレンズに貼られたシールの窓を通し記録の適否検証を行う。仮想光学円の中心円が正面に来ているか?次に遮眼子を使い左右交互に遮蔽して高さ同一性を確認する。

 ⑨ ズレが生じた場合,デモレンズ上のシールをピンセットで位置を微調整移動し補正する

 ⑩ 測定の完了するフレームをチャート上,仮想光学円の中心位置座標を測定し,加工機にデータ入力しレンズ外周加工・玉嵌め作業を経て完成する。

 ⑪完成眼鏡はレンズメーターで中心印点後シールを貼り,シールを見ながら玉嵌めによるフレームの歪など修正フィッティングを行い,融像円の正面中央に成立と左右交互に遮眼子で高さの一致を確かめ完了。

 ⑫ 事後対応の重要性の告知,顔に装着使用するためフレーム変形は,光学中心位置の狂いに直接影響を受ける。従って定期的な検査調整の必要と変形時の注意書きなどを手渡す。

 

近見測定

 上記⑤以外の目視対象を遠見から近見用の書物などを見させ,生じる融像円により微調整を行う。この点以外上記と同じ手法により行う 

測定作業に対するユーザーの受け止め方と評価 

 被検者は,上記測定作業中,中心特定をフレーム上に行っている事を自然に知り,レンズ中心の重要性と体の多様性を反映し中心記録されたデモレンズ上の視軸通過点を見て【新発見】した感動や反応をよく目にし,過去にない新鮮な【体験】【啓発】がともなうことを認めている。

 検者は,装置を通して被検者の高い関心と要望による検者の予想を大きく超える指示・要求が生じ,強い希望に対し責務を感じ,更に患者・顧客の,完成後の検査一実証による品質確認ついて,眼科や顧客から高い評価を得ている。

 一部眼科の取り組みは,新しい広がりを持つ【3次元眼鏡処方】と捉え,各方面の紹介を予定して頂いている。また特に調節力があり強い不同視の学童等には,眼鏡の間接矯正と言う側面から眼鏡は万能でなく,常用眼鏡の近見使用は,顎を引かせ出来るだけ目に負担の少ないレンズ中心で読書などをする姿勢を指導している。

 調節力の衰えた不同視の近見眼鏡で目眩・苦痛を覚えるケースは,近見視軸測定し同位置に合わせた眼鏡で目眩の改善が可能です。またこれら老眼鏡は,近見視軸上にレンズ中心を合わせた場合,従来の2mm程度下げた老眼鏡より見やすく文字等の色が濃く見える等などの良好な反応を数多く得ている。

 

今後予想される発展性

 装置は単純構造かつニュートラルで広い可能性を秘めていると予感する。これら広い研究の可能性に関して,斜視のプリズム矯正過程における眼位変化の観察測定,過去の近見PD等に関する一般原理・手順の見直し,不同視ユーザーに対する測定実践と対応方
法,など検証・実績を基にする専門機関に於ける人間工学研究への発展性等を秘めており,今後各研究者の研究利用を歓迎すると共に協力を惜しまない。

 

 

 

 

 

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