弱視治療における成長に伴う度数等の変化

弱視治療における成長に伴う度数等の変化

子供の目の成長と変化

よく保護者からこの先どういう風に眼鏡の度数など変わっていくか?の質問が多い。7年間お世話してきたケースを一例として掲載する。誰にでも共通するとは限らないがご参考にされたい。ご両親の子を思う気持ちと都度ご来店いただくご足労など大変なものである。いずれ子は親の深い愛情を知るときが来ます。

ユーザー

大阪市内 ご在住 女児 現在9歳


調節性内斜視

遠視性の屈折異常がある場合に多く出現する斜視、ただし特殊なプリズム矯正など必要とせず、遠視矯正するだけで眼位は矯正されるのであまり心配しなくても良い場合が多い。最初は調節性内斜視と診断されても後に非屈折性調節性内斜視と診断され戸惑う保護者が多くこれについて若干説明します。

非屈折性調節性内斜視

初期に調節性内斜視と診断され、後に近くを見るときだけ内斜視がさらに強くなる(鼻側へ目が過剰に寄ってしまう)場合がある。これを非屈折性調節性内斜視と呼ぶ。このような診断が下された場合「遠近両用レンズ」が処方される。このような場合一般的な単焦点レンズとは全くタイプの異なるレンズが処方される。


レンズタイプ:遠近両用

1枚のレンズに遠くを見る度数と近くを見る度数が入っているレンズを使用する。様々なタイプのレンズが有る(子供は皆元気なのでレンズ素材の耐衝撃性など安全性に留意する必要がある、これに加えフェイルセーフの為レンズ外周加工に安全策を講じる必要性がある)

EXタイプ

近くを見る視野は広く使いやすい、薄加工が出来ない為 レンズが極端に分厚く重たい 又用意されているレンズ基材は「粘りのない脆弱」な屈折率1.5 扱い方にもよるが破れる可能性が高く、製造するメーカーが少なくなってきている

バイフォーカルB28タイプ

近くを見る視野はEXタイプと比べやや狭いが殆どEXタイプと殆ど遜色なく使える、レンズの薄加工可能で軽量化が可能。近方視する小玉位置は細かく指定ができ、レンズは粘りが有り割れにくい屈折率1.6と1.67が可能

下の図は他の子供の症例のレンズを参考までに載せる(バイフォーカルB28 B:形状を示し 28:は小玉の大きさを表す)

レンズレイアウト

レンズレイアウト

境目のないタイプ

累進屈折力レンズ、成人に一般普及している境目のない遠中近レンズ、近見加入部分が殆ど目立たない、レンズの薄加工と軽量化が可能、ユーザーはどこに加入部分があるか解りにくい。上記3タイプの内いずれを使用するかはドクターの判断や周囲の子供たちが奇異に感じレンズのことでいじめられて境目のないタイプに切り替えるケースがあった。 レンズは粘りが有り割れにくい屈折率1.6と1.67が可能)


6歳時処方された累進屈折力レンズの詳細

右目 S+5.50C-1.25A180 近見加入 S+3.00

左目 S+5.50C-0.50A180 近見加入 S+3.00

瞳孔間距離 54.0mm

累進屈折力レンズ

レンズ厚と重量

レンズ厚と重量

レンズレイアウトと説明

レンズレイアウトと説明


成長に伴う度数の変化 

全てのお子様に当てはまるとは言えないが、成長に伴う眼鏡の変化として

①遠視度数は減じ、②瞳孔間距離は幅が広くなる

など変化が生じれば眼鏡は作り直しが必要になる。

2013/06/14 2歳

単焦点レンズ

右 S+6.00 

左 S+5.50 PD 45.0mm   

ご来店動機

来店動機は近所には安売りメガネチェーン店しか無くそこで眼鏡を初めて作った。眼鏡店担当者は専門的知識を持たず、保護者が店で目の中心測定がされず。お子さんはメガネを掛けたがらない。不安と疑問を強く感じ、当店のことを知り改めて当店で弱視治療用眼鏡を作り直したのがお付き合いの始まり。当初眼科は、調節性内斜視の診断。

2017/04/01  6歳

累進屈折力レンズ(非屈折性調節性内斜視)=遠近両用レンズ

         右 矯正0.8XS+5.50C-1.25A180 加入+3.00 

         左 矯正0.9XS+5.50C-0.50A180 加入+3.00 PD 53mm

当初の調整以後毎6ヶ月の定期点検・検査・相談を続けた。どうしても寄り目になることを眼科と相談し、非屈折性調節性内斜視の診断を受け遠近両用レンズ(累進屈折力レンズ)の処方がされ眼鏡製作

2019/05/11  8歳

単焦点レンズ

         右 矯正0.9XS+5.00C-2.00A180

         左 矯正1.2X S+4.75C-1.00A180 PD 遠用=54mm  

遠近両用眼鏡を使用した2年後、視力の向上と眼位が安定し遠近両用レンズが必要なくなり単焦点レンズが処方された。

2020/02/01  9歳 

単焦点レンズ

         右 矯正1.2XS+4.25C-2.00A180

         左 矯正1.2XS+4.00C-1.00A180 PD 遠用=55mm 単焦点レンズ

身長の成長とともに眼球が大きくなり屈折度数が減じられて処方され、両眼の視力は弱視ではなく両眼視機能の発達などほぼ正常に成長。
当初判別できなかったステレオテストの「バタフライ・テスト」で蝶の羽を掴むような仕草から立体的にものを見る両眼視機能てすとで蝶の羽などが立体的に見えている。

大きく変わった点:遠近両用レンズから単焦点レンズに変わった

2020年02月01日製作した単焦点眼鏡

目の中心測定

目の中心測定

 

準備できたレンズとフレーム

準備できたレンズとフレーム

眼鏡総重量 15.2g

完成した眼鏡

完成した眼鏡

フレーム上部からレンズ厚観察

フレーム上部からレンズ厚観察


両眼視機能テスト(ステレオテスト、バタフライ)

来店の折、都度テストしたステレオテストは、最初の頃「砂嵐」しか見えなかった。しかし2年ほど前、視力が良くなるに連れバタフライテストで蝶の羽や触角などが立体的に見え、捕まえる仕草をするようになった。両眼視機能の成長は大きな発展で保護者と共に大きな喜びを共有することが出来た。

ステレオテストが奇妙でとても面白いらしく、来店の度に「蝶々見せて~」とせがむようになった。すくすくと元気に育つ姿は喜ばしい限りである。

1週後点検

1週後点検

1週後点検

少し斜めを向いちゃったので、次回はもう少し上手に撮影します。

 

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