子供メガネ 中心一致とは

 子供メガネ 中心一致とは 

「中心一致」=目とレンズ光学中心の一致は眼鏡の一番大切な中核品質です。 だが・・・殆ど確認せず手渡されている現実がある。大人すら説明しにくい中心の狂いから来る見え方の異常、説明力に乏しい子供にそのまま確認もせず渡して良いだろうか?

 

完成した眼鏡装着状態

完成した眼鏡装着状態

 

このケースでは名古屋市にある眼鏡専門店で調整した眼鏡に見た問題点を解説し、これから子供メガネを購入される保護者へ注意喚起と参考を目的に記事を書いてみる。 特に留意するべき点として、メガネのレンズ光学中心はメガネ装着時3次元座標で立体構成される。

 

 

レンズ中心は3次元構成

レンズ中心は3次元構成

 

ユーザー

大阪市内 7歳 小学校1年生 女児

 

主訴

メガネがズレやすく、メガネの右テンプルが以前より折れたせいだろうか。時々頭痛がある。ズレにくく簡単にこわれ難いメガネを新調しようとネット検索で当店を知った。

現状

メガネが度数の割に重たい25.2gも有った。ユーザーはメガネがずれ下がり易いのでこれを防ぐためシリコン製の「メガネストッパー」を使用している。

持ち込まれた子供用メガネに見られた問題点

重量

 

子供メガネ 重量25.2gは重い

子供メガネ 重量25.2gは重い

 

先ず必要以上にメガネフレームは大きすぎて重量を重たくしている、結果から言えば当店でレンズ軽量化し調整後総重量は12.7g、使用中の眼鏡の約半分の重量に仕上がった。

 

光学中心の狂い

写真の通り光学中心は大きく目の中心(角膜頂点反射点)から下へ落ちている。実測で右4ミリ 左5ミリ程度下にずれ下がっていた。

普通保護者はこの写真を見て「なんの問題があるか?」と感じるであろう。しかし小さなユーザーがこの眼鏡を介して遠くを見た時目に映る像が右と左で高さが異なって見える。本人に見比べをさせた所、高さの差があるという。これは左右の度数差によるものである。

この時目の外側にある眼外筋(左右それぞれ6本の筋肉)を無意識に調整し像が一つに見える訳であるが、巷でよく言われる「違和感」が生じて居るわけである。最初違和感があったが慣れたという。

店員の話はそのまま鵜呑みしない

眼鏡店の店員がよく使う言い逃れ常套句(じょうとうく)「メガネをかけた当初の違和感は次第になれてきます」は、真に受けてはならない。正しく合わされている場合は違和感など生じない。「一体誰の責任」にしているのか・・・ではないか?実に危うい詭弁である。

ひどい場合は眼痛・頭痛の原因になる。そのまま放置すると確かに件(くだん)の眼鏡屋が言う通り慣れるてくれるが身体の方が目に生じた不都合を合わせているので有る、そのまま長期放置するとやがて厄介な上下斜視を形成してしまう原因になる。ひどい場合は「見え方がぼやけ見えにくくなる」。

保護者は、子供の違和感や見え方の異常などを訴える場合、放置せず都度究明し解決する必要がある。保護者は、レンズ中心が透明であるためレンズ光学中心が目と合っているか確認する術と知識がなく眼鏡店任せで、科学的でない「信用」などで済ませている場合が実に多い。

 

レンズ光学中心のズレ下がり

レンズ光学中心のズレ下がり

問題1、悪玉メガネストッパー

子供メガネは、弱視治療などの目的で眼鏡店で作られる場合が多い。基本的には発育中の子供の身体的特に頭部の発育と多様性に合わせできるだけ都度成長に伴う変化に精度良く合わせズレたりしないようアフターケアーを利用し定期的に点検調整を必要とする。

持ち込まれる子供メガネを見る時、時々特に耳掛け部の調整がこのように眼鏡店が何もせず杜撰(ずさん)でズレ下がり防止目的の安易な「メガネストッパー」で問題解決したつもりでいる場合が多い。筆者の目からすれば眼鏡店は調整を放棄し市販のこの「メガネストッパー」でただメガネのズレ下がりを防止しただけで目とレンズ中心の整合性を崩し目に悪影響があることに対し無頓着である。店によっては、最初からオマケされている「メガネストッパー」をユーザーが自分で取り付けているケースがほとんどである。

ズレ下がらないかも知れないが以下写真のような状態になってレンズ光学中心を狂わさせ目に悪影響を及ぼしている場合を多数見ている。

 

悪玉「メガネストッパー」

悪玉「メガネストッパー」

 

メガネストッパーは、メガネテンプル(ツルとも呼ぶ)の任意の位置に差し込んで使うシリコンラバー製のものである。しかし止める位置を誤ると左右でメガネフレームがシーソーのように右や左の高さを変えてしまう。このケースではテンプルの耳掛け部分が耳の上端から約1.5cmメガネフレームを浮きあげ、テンプルの先は耳の後ろの骨から浮き上がり宙に浮いている。

眼鏡は概略両耳と鼻の部分の3点で眼鏡を顔に掛かるようになっているが、鼻の部分は固定するが、両耳で不安定なこのような部品を使うことにより眼鏡の掛かり具合が不安定なためレンズ中心が目と合わなくなる。こレを使うことにより眼前に位置するフロントフレームは常に安定しない。このケースでは単純な球面度数のズレ下がりによる「上下プリズム」の憂慮だが、仮に強い乱視ユーザーの場合簡単に乱視軸に狂いが生じ見え方がぼやけて見えるようになる。

ならばどうするか?

このような「メガネストッパー」の使用は有害である。このようなものに頼らず、眼鏡枠それ自体だけで合わせるべきものである。手間はかかるがそれは従事者に課せられた義務と業務である。テンプルを加温し耳から後ろの頭部変化に沿わせる「曲げ加工」を手作業で調整し余計な部品は使わず、眼鏡の調整で完結させるべきである。時間を掛け適正に合うまでこの作業をこなし余計なものは付け加えない。

 

悪玉「メガネストッパー」

悪玉「メガネストッパー」

 

問題2、頂点間距離

この言葉は、保護者にとって聞き慣れない言葉であろう。頂点とは目の角膜頂点、言い換えると目の天辺を表す。次に「頂点間」とは、角膜頂点とレンズ後面までの距離、すなわち頂点間距離の標準距離は12ミリである。この距離は、眼科などで処方された度数を眼前で実現するための大事な要素である。角膜に近すぎても離れすぎても良くない。

このケースでは、シーソーのように右目が近く左目が離れている、左右で距離不同の状態である。

仮にコンタクトレンズの場合、頂点間距離は0=ゼロで眼鏡と比べると度数は弱めに処方される。眼鏡の場合コンタクトレンズに比べ度数は強めになる。よく当サイトのメガネ/コンタクト度数換算表が参照されているがレンズから網膜までの距離の差による度数換算が有るぐらいに度数変化がある。

したがって、右と左のレンズ度数は頂点間距離の違いから処方度数と異なる別の度数になっている。

 

頂点間距離不同

頂点間距離不同

 

頂点間距離不同の原因

このケースでは、下の写真の通りメガネテンプルが丁番の後ろで破断(ただしプラスチックテンプルの中には金属芯が有るため完全には破断していない)していたため右テンプルが外側へ開き気味になっていたため右レンズ後面が角膜に近く、左レンズは角膜から離れすぎている。

子供達の調整経験から言えば頭部頭蓋骨の形状は天然であり左右対称ということは稀で、極端に眼鏡枠を歪めて合わせる場合も実は少なくない。いずれにせよこのケースではメガネ・テンプルの破断が原因で頂点間距離に狂いが生じていた。

 

右テンプル折損

右テンプル折損

 

新しい子供メガネ調整

眼鏡目的

弱視等治療用眼鏡 (遠視性 不同視弱視)眼科処方

 

度数

右目  S+1.50

左目  S+3.25

瞳孔間距離 

 

(右目と左目の中心間 水平距離)1次元表記

遠用=57.0 mm

 

この度数の特徴

 

右目と左目で球面度数差が約2.00度(ディオプター) 少し知識のある眼鏡技術者であればすぐに目とレンズ中心を厳密に合わせねばならないと連想し、眼鏡のズレ下がりは禁物であると留意するだろう。そうであれば幸いである。しかし写真から分かるように、現実は残念ながら眼鏡テンプルは、未調整のメーカー出荷状態のままで何も手が加えられていない。

保護者の話では、前店で娘さんの目の中心を図るような作業はしなかったということであった。レンズ中心は、レンズ加工機の「標準データムライン」に造作なく左右対称に加工されユーザーの多様性と無関係に目の中心測定なく作られたと筆者は想像する。中心位置測定していない眼鏡が偶然に目と合うことはありえない。

 

目の中心位置測定

模擬レンズ上に捉(とら)えた予定するレンズ中心位置、稀に左右対称ということがあるが、このケースでは左右対称に殆ど近かった。だが、中心の測定をするのとしないのでは、大きな違いである。

 

瞳孔中心位置測定

瞳孔中心位置測定

 

レンズ発注作業

レンズの重量を表しているがこのケースでは、予定するレンズの光学中心位置がフレームのほぼ中心に位置することによりレンズは理想的な厚みと軽量性を実現可能であると図面は示している。レンズ重量は左右合わせ4.6g。既成レンズを使用した場合は、8.2gである。

 

レンズの厚み詳細

レンズの厚み詳細

 

予定レンズ中心位置

図面上 x の地点が予定するレンズ光学中心の位置。

 

レンズレイアウト

レンズレイアウト

 

光学中心確認

完成したレンズ中心をレンズメーターで印点し、その中心から当距離の位置へ中心チェックシールを貼り、「保護者確認」の後写真撮影。

ここには筆者に限らず眼鏡店の信用・知名度・経験・薀蓄(ウンチク)など一切関係ない。保護者の合うか合わないかの事実確認が重要である。

インスタント・コーヒーのキャッチではないが、何も足さない、何も加えない

 

完成した眼鏡装着状態

完成した眼鏡装着状態

 

眼鏡の総重量

レンズ+フレームを合わせた総重量 12.7g  従前の眼鏡重量の約半分である。

 

その後

上記写真は1週後点検時のもの、

以後定期点検を1ヶ月後3ヶ月後・・・ 眼鏡は格段に軽く、ずれ下がることがなく時々生じていた頭痛もなく快適だという。

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