脳内出血による同名半盲(1) 視野角拡大
ユーザー
奈良県ご在住 54歳男性 営業職
来店動機
脳内出血による同名半盲 (どうみょうはんもう) で、ワラを掴む思いと不自由な体で眼科の紹介の静岡県にある某眼鏡店の論文を見て信頼できると思いわざわざ奈良県から静岡県に行った。そこで得たフレネル膜付き眼鏡は、強度過ぎて膜の縦縞が逆に視界を遮って見えにくく、片眼だけであればなんとか使えるが両眼にフレネル膜を貼られたら不透明で快適でない。
実際に眼鏡を掛けて見たがぼやけて不透明なフィルムの効果があるかどうかすらよくわからなかった。使用されたフレネルプリズム膜度数は右左にそれぞれ20.00⊿であるとユーザーから聞いた。
色々悩み、なんとか今の苦しい見え方を改善してもらえる眼鏡専門店がないかをネット検索しこちらのサイトを発見、意外と奈良県から近くに専門的な技術店があると知りとりあえず相談のために来店してみた。
同名半盲とは
脳腫瘍や脳内の出血などで視神経束が障害を受け左右の同一側が見えなくなる症状を指す。視神経は脳内で交差する部分が脳腫瘍で障害が生じる場合があり、左右のどちらかの側に偏って見えその反対側は見えなくなることが多く、見える像位置をプリズムを使って正面に移動することにより日常生活を容易にできる場合がある。
共通する視神経束の障害
視神経束が傷害される眼病としては他に緑内障がある。特定部分に暗部が生じたり視野欠損した部分が邪魔になり見える場合、その視野欠損や暗部を邪魔にならないところに像移動させ見やすくする場合、同様のプリズム原理を利用した方法で読書などを容易にすることができる場合がある。
上で述べた同名半盲と緑内障は「視神経束の障害」という点は同じで、対処手法もほとんど同様の手法により目に映る「像位置移動」である。これら障害を持つ患者には有用確実な手法と考える。
しかし今まで持ち込まれた下記のような面精度が悪く縦縞の伴う強度のフレネル膜プリズムの不透明さから当方では、眼科処方の場合を除く以外フレネル膜プリズムは極力用いず可能な限りプリズム組み込みレンズを別作し、それを眼鏡枠に取り付けて対応してきて上記ユーザーの言う見えづらく使えないということが少ない。
度数の限界は青天井
レンズメーカーが備える研磨設備による技術的限界とされる両眼20.00⊿を超えるものは、当方の工夫によりおおよそ40.00⊿程度までは可能であり度数の限界は設けていない。言い換えるならば安易なフレネル膜と同等の度数を得ることが当方では可能としている。
プリズム矯正に伴う欠点
ただし、強度のプリズムによる見る像の縁の片側が青く、その反対側がオレンジ色に像の縁に着色して見える不都合が生じる、これは「色収差」と呼ばれる現象が隣り合わせである。この現象は、フレネル膜プリズムでも同様で現在の技術レベルでは避けられない。
使えなかった眼鏡
持参された静岡県で購入の眼鏡、フレネル膜プリズム 片眼20.00⊿
上記いずれの眼鏡も、わずか数センチのところで縦縞が生じ不透明であることが観察される。論理的にはプリズムを応用し像を移動するという原理ではあるが、実情はこのようなものであった。
今回制作した眼鏡の度数詳細
PG・目的
遠用
利目
右側
度数
右目 裸眼視力 0.1 矯正視力 1.2XS-4.75
BI 10.00⊿
左目 裸眼視力 0.2 矯正視力 1.2XS-4.50
BO 15.00⊿
VA 両眼視力 1.2
PD 遠用=65.0mm
原理原則
通常、左右の像を移動する場合、このような場合右左右の度数を同等にするのが一般的である。
実装による度数割り出し
しかしこのケースでは右目BI 10.00⊿ 左目 BO 15.00⊿ で 約5.00⊿のプリズム差を実装から割り出した。これはユーザーの見え方が自然に見えるプリズム当量を装用テストで割り出したもので、原理原則にとらわれる必要などなくユーザーの装用感から自然に見える違和感の少ないプリズム度数を割り出した結果である。
ユーザーの声
当店では追跡調査を行っているが、ユーザーは「よく見えるようになって視野角も160度ほどに広がり満足している」「よく見えるようになった」との声を得ている。
制作した眼鏡写真
左レンズの外側は、厚みが生じているので見た目の厚み感を軽減するために斜めに切削加工可能であるが、ユーザーの視野角への願望が強く、説明の上切削加工は控えて欲しいとの事で厚みはそのままにした。
ただしレンズの端で生じるゴースト(渦巻)はレンズ外周部すべて鏡面研磨を施し正面から見たレンズの厚み感はほぼなくなっていることが見ることができる。
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