文字が読み辛い

文字が読み辛い

大阪市内ご在住 63歳 女性 医療従事者

主訴

今まで27年間も日本橋の眼鏡専門店で眼鏡を調整してきたが眼鏡がよく見えないので、目の向きに疑問を感じておりよく見える眼鏡を求めようとネットで調べ一月程前奈良県で斜位対応した眼鏡を新調した。「斜視」が有り矯正してもらうとよく見えるようになった気がするが書類に目を通したりすると目が疲れやすく文字が読辛いなどストレスに悩まされている。

改めてネット検索したところ目と鼻の先に同様の眼鏡専門店があり文字などが読み辛いので相談に訪れ検査。

日常仕事柄多数の書類に目を通し、資格継続試験で勉強するのに今のままでの眼鏡ではどれも支障があり、強いストレスを感じている。

希望事項

強度近視なのでレンズが分厚くならず軽いことを望む


使用中の眼鏡

①日本橋の眼鏡専門店 遠用

単焦点眼鏡 遠用

単焦点眼鏡 遠用

度数

右 S-8.25 

左 S-6.50C-0.75A172  

PD(瞳孔間距離) 59mm

自覚として左目があまり見えてない感じがする 遠見両眼時 矯正視力: 0.8

②日本橋の眼鏡専門店 近用

単焦点眼鏡 近用

単焦点眼鏡 近用

度数

右 S-7.50 

左 S-6.50C-0.75A171  

PD(瞳孔間距離) 57mm

文字が読みづらい、たまに読み飛ばしが生じる

 

③奈良県の眼鏡専門店 遠近両用

累進屈折力眼鏡 遠近両用

累進屈折力眼鏡 遠近両用

度数 

レンズタイプ: 遠近両用 累進屈折力レンズ

 S-9.25C-0.75A112 BI 4.75⊿ BU 5.25⊿ 

加入(近くを見る為補った調節度数) S+2.25

 S-7.50C-1.50A166 BI 4.75⊿

加入(近くを見る為補った調節度数) S+2.25

PD(瞳孔間距離) 59mm

遠くはよく見える感じがするが 文字が読みづらい


当店測定

眼鏡実装 中心確認

眼鏡実装 中心確認

レンズタイプ

車の運転はたまにするが日常、対面による事務仕事や資格維持のための勉強に適する眼鏡レンズ。実際に作った遠近タイプで失敗している。

累進屈折力レンズ 中近タイプ 

度数

右目 裸眼<.05 矯正 1.2XS-9.00C-0.75A90  プリズム矯正  BU2.25⊿ R>G(過矯正でない) 

加入(近くを見る為補った調節度数) S+3.00

左目 裸眼<.05 矯正 1.2XS-8.75C-0.75A160 プリズム矯正 BD2.25⊿ R>G(過矯正でない) 

加入(近くを見る為補った調節度数) S+3.00

瞳孔間距離 62.5

主位眼(利目) 右側

両眼視力 1.5p(ランドルト環はダブらない) 

両眼視機能検査 : 良好 (立体視標の分別良好)

使用したレンズタイプ : 中近累進屈折力レンズ

測定で分かったこと

馴染みの店の測定技能に限界

持ち込まれた3本の眼鏡はいずれも日常使用されてきた屈折矯正値に固執している感じでユーザー不都合を十分に理解できておらず両眼視機能検査が出来ていない感じがする。また①遠用と②近用の「左レンズ度数」が同じということは理解に苦しむ。

左目も見ている感じでよく見え、左目を使えていなかったことに気づいた

当方屈折検査で左右の度数差は殆どなく本人の装用感も新たな屈折度数はあまり使っていなかった左目が「左目も見ている感じ、よく見える」との反応を得ている。当方の屈折検査では左右の度数差は殆どなくこの測定値のほうが眼鏡を使用する場合ユーザーメリットがある。

見え方の悪さの主因

見難さを生じている主ファクターは、上下斜視であった。おそらく原因と考えられるのは過去に於ける測定で左右差を作り、レンズ中心が目の中心と一致せずズレ下がることにより不正な上下プリズムが生じているにも関わらず我慢して使用することにより後天的な上下斜視を形成してしまったと考える。

誤ったプリズム矯正

奈良で作った眼鏡は比較的強い外斜視矯正を行っていた。当方検査では弱い内斜視が検出された。可能性としては過度に外斜視矯正した影響で内斜位が生じていたと思われる。ユーザーの感じ方からは「水平方向のプリズムを抜いたほうが見易い」ので、被検者の実装テストによる感じ方に従い外斜位のプリズム度数は抜いた。

アフターケアー

今後の定期点検による経過観察で度数の適否をユーザーの感じ方を参考に見極めユーザーが良く見える度数に無償で作り直す。

レンズ厚

レンズ厚

選択フレームへレンズ加工取り付けの概要

フレーム選択

これまで使用してきたフレームはいずれも確かに軽量であるが、フニャフニャし不安定なためレンズ中心を保つことが困難であるため、しっかりしたレンズ中心位置変位即ち狂いが生じにくくレンズ中心位置を安定的に保てる「フルリム・フレーム」を提案した。レンズの厚みに影響を及ぼす瞳孔間距離とフレームサイズをレンズが分厚くならない寸法を考慮し、数あるフレーム群から選抜した一品を専門の目で見て提案。

専門の役割

ユーザーが自由にフレームを選択する楽しみも大事であろう。しかし度数が強度であることや機能性を考え割り出すのは素人では無理がある。このフレーム選択は、我々の仕事である。この旨説明・了解を得て下記フレームに決定した。

完成眼鏡の概要写真

レンズ取り付け概要

レンズ取り付け概要

レンズの厚み観察

レンズ厚上部からの観察

レンズ厚上部からの観察

レンズ下方からの厚み

レンズ下方からの厚み

 

右斜め上からの概要

右斜め上からの概要

実装 

レンズ中心と目の一致確認

重量

眼鏡総重量 17.6g

眼鏡実装 中心確認

眼鏡実装 中心確認


比較対照(3つの眼鏡店)

全ての眼鏡の比較写真

全ての眼鏡の比較写真

 

度数一覧

矯正視力球面乱視+軸加入プリズム瞳孔間距離㍉
①右0.8

遠用

S-8.25単焦点無し59.0
①左S-6.50C-0.75A172単焦点無し
②右近用S-7.50単焦点無し57.0
②左S-6.50C-0.75A171単焦点無し
③右1.2pS-9.00C-0.75A112+2.25BI 4.75⊿ BU 5.25⊿59.0
③左0.5pS-7.50C-1.50A166+2.25BI 4.75⊿
④右1.2S-9.00C-0.75A90+3.00BU 2.25⊿62.5
④左1.2S-8.75C-0.75A160+3.00 BD 2.25⊿

度数に関する考察

①と②は同一店で作られたものであるが遠用と近用眼鏡の左側度数が同一である。現在の視力状態から推察して左右の度数差があるのは理解しにくい

③の眼鏡は利目右目の屈折矯正視力は1.2程度の矯正であるが、左目は矯正視力0.5pでプリズム矯正で「両眼視機能」を高めるべき目的であるなら矯正不足。また上下プリズムを利目側にだけ入れているが、被検者の装用テストで左右振り分けの方が見易いという反応だった。両眼振り分け実装テストをしたか疑問がある。ユーザーの装用感から当方処方は左右振り分けにした。

①における左右の球面度数差即ち等価球面値で比較した時約1.25ディオプター、③も約1.25ディオプターである、しかし当方測定では左右の度数差は0.25ディオプターしかなかった。これはユーザーに眼鏡を作る時や眼鏡のズレが生じた場合でも有利である。逆に言えば27年も付き合ってきた眼鏡店が提供した測定の誤りに拠る左右度数差のあるメガネを長年かけてきた結果後天的な上下斜視を形成する原因だったかもしれない。

ユーザーの満足度

ユーザーの感じ方、「今までの眼鏡の中で左目は見ていないような感じ。新しい眼鏡はっきりと見えて明らかに左目も見ている感じで快適」。また当初の目的である「文書を読むことは解決」した。

誤矯正

水平のプリズム矯正の必要の有無は、1週間装用した後の自覚ポラテストで必要ないと判明、したがって③で作った外斜視矯正9.50⊿は必要なく逆に文字を読み難くしていた原因と考える。

眼鏡軽量化

眼鏡軽量化を謳う「ウスカル」というものがある。内容的には、特段特定のテーマやキャッチに左右される必要はない。基本的に適宜フレームを小さくし多少レンズの屈折(圧縮度)に留意する。しかし熟練した店員に希望を伝えればどこでも上手な選択が可能である。その言葉に振り回されるとフレーム選択の幅を狭めることにつながるので注意が必要である。

次の写真に入れた基線を参考

フレーム・レンズ部の中心に目の中心が位置するものを選択

フレーム・レンズ部の中心に目の中心が位置するものを選択

軽量化へのアドバイス

方法

度数にもよるが強度であればフレームを選択する時水平(青線)垂直(赤線)の真ん中に来るようなフレーム選択すれば鼻側と耳側の外周部厚みは、ほぼ同一の厚みと軽量化が期待できる。

近視レンズの特性

近視レンズは、中心厚が規定の厚みを持っており、研磨によりレンズ厚を変えられない。

遠視性の場合は厚みを変えられる

参考だが、遠視性レンズ(プラス度数、レンズを通してみると像が大きく見えるレンズ)は、フレーム形状や口径と相互関係のある目の中心から最大半径が最小になる口径のレンズを小売店に設置されている測定器で別注すれば薄加工ができる。したがって遠視性レンズの場合は別にレンズを作る必要のある注文生産アイテムである。

美観:レンズ加工で消せるレンズ渦(牛乳ビンの底のような)

レンズは一般に丸い生地からダイヤモンド砥石で加工され所定のフレーム形状に削り成形する。この時砥石の粗さを残した荒いままであるとレンズ外周部において白いゴーストが生じ渦が立つとともに厚み感を増幅する。これを防ぐ方法は、レンズ切削砥石を目の細かい砥石で切削面を透明に仕上げる「鏡面研磨」で渦(ゴースト)を防ぎ美観を高めることが出来る

ただし特定角度でレンズエッジ部から光が反射し眩しく感じる場合がある。そのような場合は特定部分をそのまま白く残せば解決可能である。

写真説明

コバ研磨

コバ研磨

レンズ外周全体に施す「鏡面研磨」で強度近視のレンズのエッジ部に生じる白いゴーストを消す事ができ、同時に相手から見られる見苦しい「厚み感」を減じれる。

幾ら高屈折の圧縮レンズを使用しようが、切削面が荒いままに残せば白いゴーストを生じ厚み感を増し美観を損ねる。

また弱度の場合でも切削面が荒いままに残せばユーザーが想像する以上の厚み感を醸し出す場合がある。

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