S+18.00弱視の方必見、ウスくカルく

S+18.00弱視の方必見、ウスくカルく

神戸ご在住 36歳男性 営業職

主訴

アフターコンタクト使用で 可能であれば運転免許更新用と眼鏡が重たく分厚い。軽くしたい。何故かコンタクトレンズはあまり見え方がよくない。ハードコンタクトレンズと眼鏡を併用中。眼鏡・コンタクトも十分な視力が出ず、現在両眼視力0.6 運転免許ギリギリでいつも免許更新時不安を感じてきた。現在使用中の眼鏡は10年使用で古くレンズに傷(表面にひび割れクラック・ゆず肌状)などのため見えにくい、日常生活で今よりよく見える眼鏡が欲しい。


使用中の眼鏡

現在の状況と使用中の眼鏡検査

旧眼鏡度数 (内斜視プリズム矯正なし)

右 S+12.00

左 S+13.00

瞳孔間距離 64mm

 

使用中の眼鏡

使用中の眼鏡

上部から

上部から

上部から

上部から


使用中のハードコンタクトレンズ

ハードコンタクトレンズ度数 (構造的にコンタクトレンズはプリズム矯正不可能、コンタクト装着の上に眼鏡装着しプリズム矯正を行うことは可能であるがコンタクトレンズを使う理由がなくなってしまう)

右 S+17.00

左 S+18.00

眼鏡度数に比べ度数は強いが、頂点間距離すなわちコンタクトレンズは角膜上に置くため度数を強くする頂点間距離補正によるもので、ほぼ眼鏡度数と差が無いとみなすことが出来る。


検査結果

強い遠視性に加え内斜位を検出

右 裸眼視力0.05 矯正視力 0.9~1.0pX S+12.00

左 裸眼視力<0.05 矯正視力 0.4 X S+14.00 

内斜位 7.00⊿

瞳孔間距離 遠用=63 


見えにくい原因

ユーザーがより良く見える眼鏡を知らなければ、弱視だからこんな見え方だと思いこんでいる場合が多い。視力矯正に関わる従事者の技量や妥協の産物の場合がある。ユーザーが一歩踏み込んで受ける我々が最善を尽くせばより良い見え方を享受できる場合がある。このケースの場合、来店動機は運転免許更新時の不安解消と言う動機だったが来店されご自身がの目の問題点を両眼視機能検査で探り改善に至った。ユーザーにすれば新しい発見だった。生涯知っておかねばならない視力に関わる両眼視機能に関わる異常と対策である。

矯正方針

フレーム口径を可能な限り小さくし、レンズ設計段階でアイポイントとフレーム形状を織り込んでレンズ制作し軽量化を試みる。視力に影響する眼位を検査した所遠視性眼にありがちな内斜位が検出された。

改善点

レンズメーカーが勧める見栄えの悪い下記のようなレンチキュラーレンズがあるがこれを避け、一般単焦点レンズで軽量化を極限まで追求した。遠視の場合他店では何故か非球面レンズを多用するが経験的にユーザーの装用感や評価が低い。したがって「球面タイプ」レンズ使用。

レンチキュラーレンズ

重量測定結果

フレーム+レンズの総重量 19.7g である。

結論 

よく見えると信じていたコンタクトレンズ以上の矯正視力を獲得、気づかなかった斜視の発見と視力改善

この強度度数であればレンズメーカーは製作範囲の括りから見苦しいレンチキュラーを勧めるのが一般的である。しかし今回単焦点の製作範囲S+10.00を超えたレンズ製作が可能であったのでこれを準用。レンズ縁の最小厚は0.5mmを指定した結果かなり軽量化できた。

この記事を読んでおそらく読者は、この度数がどれくらい強いのか?イメージし難いだろう。有り体に言えば、虫眼鏡のレンズの度数はS+4.00程度のもので、S+12.00と言う度数はこの虫眼鏡3枚分の厚みであると想像していただければ理解できるかと思う。


設計したレンズ設計図面をページ下に貼り付けたので参照されたい。単純にレンズ製作したときの厚みは数値の下、薄く改善された厚みは上部に表記されている。

レンズの厚み図面

レンズの厚み図面

レンズレイアウト図面

レンズレイアウト図面

測定された予定光学中心の位置

 

アイポイント測定直後

アイポイント測定直後

レンズ加工取り付け直後

レンズ加工取り付け直後

プリズム度数による厚みの偏移

左右のレンズは基底外方(ベースアウト3.50⊿)耳側でわずか厚みが増しているのがわかる。逆に鼻側はナイフエッジのような極薄0.5mmの仕上がりである。

上部よりレンズ厚み

上部よりレンズ厚み

下部よりレンズ厚み

下部よりレンズ厚み

実装直後

実装直後

瞳孔間距離補正

内斜視や内斜位矯正の場合、PDメーターやオートレフの瞳孔間距離はそのままでは使えず、そのとおり制作すると眼鏡の中心は合わなくなる。プリズム矯正により瞳孔間距離は微妙に変化するが直下の写真はレンズ中心(球面とプリズム度数のミックス)がユーザーに正確に合わされていることを写真から見ることが出来る。中心が目の中心と合わなければ当初予定したプリズム当量は簡単に変移し別のプリズム度数になってしまう。

余談

時々見かけるのであるが、眼科処方に基づいて作ったという眼鏡が持ち込まれるが、検査すると処方通りのレンズを作ったような形跡はあるが、どう考えても目の中心にレンズの中心(プリズム当量の生じる地点)を測定せず作られた眼鏡が多い。

プリズム度数が付加されると度数により旧式のレンズメーターでは測定すらおぼつかない場合がある。フレーム上に目の中心を捉えず適当にレンズ加工をする眼鏡従事者がいる。プリズムレンズは、プリズム付加された地点がレンズ上に一点生じ、この地点をレンズの光学中心として見做し目の中心に正確に位置させる必要がある。中心合わせを誤れば予定したプリズム当量は変移し正確な度数が生じずプリズム矯正は覚束なくなる。

レンズと目の中心チェック

レンズと目の中心チェック

前傾角調整

頂点間距離とフレーム前傾角は適正に調整されていることが見て解る

前傾角 右側から

前傾角 右側から

 

前傾角 左から

前傾角 左から

 

指導 強度遠視性レンズに伴う基本的欠陥

このような強度遠視性レンズの場合、レンズはある角度で「鏡面反射」を起こし見えない角度が生じる。言い換えると視野角が狭くなる。眼鏡には使用方法があり無造作に使えば危険を及ぼす死角が生じる。正しく使えば欠点を補完できる。

左右で球面度数差が2度ほどあり眼鏡が単純にズレ下がるだけで上下プリズムが生じるが強度数と兼ね合わせ、自己で下手な測定機器を持たなくともレンズ中心と目の一致を確かめ補正する方法があり指導。当店が実施する定期点検の重要性も合わせて説明。

星野式ワンハンド検査法


ユーザーの声 

 

 

見え難さの原因は内斜視だった。不安なく運転免許視力検査合格。斜視矯正された眼鏡のほうがよく見えるためコンタクトは営業上使用し、それ以外の日常で運転などには眼鏡を多用するようになった。コンタクトレンズよりメガネの方がよく見える。

検査で斜視が検出され、斜視はコンタクトレンズでは矯正不可。

 

結論

矯正後 1週目 初回点検 両眼視力 0.9~1.0p 十字ポラテスト 正常

「今までと比べ違和感なくよく見える。距離感が生じている。今までよく見えると思っていたハードコンタクトよりよく見える。」

運転免許の視力検査:楽に合格したとのご連絡があった。

コンタクトレンズで斜視や斜位矯正は構造的に不可能、ぼやけた見え方の原因は矯正度数と内斜視にあった。眼鏡により解決。

1ヶ月後点検

両眼視力 1.0~1.2P 十字ポラテスト : 正常

 


 

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