こども眼鏡
弱視判定
法定3才児検診や何かの拍子や事由で眼科から「弱視判定」を受け眼鏡処方箋を受け取った時、弱視に対する知識と何をどうしたら良いか保護者の心配と当惑は察するに余るほど大きい。一方、眼科ドクターとの話し合いの持ち時間は殆どの場合15分程度でいろんな疑問や知りたいことなど十分に聞けない場合が多い。これについてはどうするか後述する。
眼鏡店に行けば解決するか?
処方箋を手渡され処方箋を眼科と提携している「信頼できるだろう」の眼鏡店へ行き適当な眼鏡枠を決め処方通りの眼鏡を作り掛けさせていれば子供は、よく見えるようになり安心と思うのが一般的であろう。しかし親や保護者の思惑と現実は異なる。
子供の弱視治療を我々眼鏡専門から見た場合、保護者が留意し注意を促すべき点がいくつかある。まず・・・
目とレンズ光学中心の一致
<誰も確認などしていない>>>
中心を合わせる
目にレンズの中心を合わせるということは、おそらく素人考えでも大切なことだろうと気づくであろう。
これは眼鏡のフレームの「デザイン」や「掛けたた時の可愛さ」などは大事かもしれないが、目的の弱視治療から考える時重要度の低い保護者の関心事に過ぎず、眼鏡の持つ機能性(弱視治療)と各眼鏡店に左右される「中核品質」とは強いて言うならば無関係である。
中核の品質
では「中核品質」とはなにか?それは「子供の目とレンズ光学中心の一致」であると言って過言ではない。物申す小生を含め眼鏡店を信ずるよりは、「保護者の目」(他覚的確認)や「子供の目」(自覚的確認)で確認し「我が子は親が護る」以外方法はない。現実には眼鏡ユーザーの殆どが確認せずメガネを使っている、言い換えるなら「誰も確認などしていない」ものを闇雲に使っている。
視力矯正のエンジン
購入しようとする或いは購入した「こども眼鏡」には例外なく「視力矯正のエンジン」になる「度数」が入っておりそのレンズに必ず伴う「光学中心」を目に合わさなければならない。左右のレンズには目で見えない「透明な光学中心」があり子供の両眼の中心と正しく合わされなければならない。
眼科処方
眼科は眼鏡店従事者が正しく目とレンズ光学中心を一致させることを処方箋に指示し期待する「瞳孔間距離」(PD、右目と左目の距離ミリメータ表記)の記載を行っている。
ここで問題にするのは「瞳孔間距離」すなわち左右の目の中心に「度数の中心」を合わせる指示についてである。
処方箋の表現と眼鏡店の違い
眼科は単純な左右の目の中心点、二点間の水平距離表示している。眼鏡店は更に眼鏡フレームを具体的に決めた対象フレーム上に目の中心位置を平面上のXY軸座標(縦横座標)で測定する必要がある。
眼鏡店で眼鏡枠を子供が装着する時、鼻筋と両耳の高さは異なり多様性に富み機械的左右対称は稀である。眼鏡店でレンズ中心を「アイポイント測定」と呼ばれる目の位置測定は測定されなければならない。眼鏡フレーム上、左右それぞれのレンズ上に縦横に生じる「座標測定」を行い目に合わせレンズ加工準備を行う(眼鏡従事者が測定する他覚的測定)。
中心の確認を親はしていない
だが残念なことに現実には、フレームを決めたら子供の目とは無関係に勝手・適当にレンズを加工しているというような事例が後をたたず遺憾なことである。測定してないのに目とレンズ中心が合う訳がないのは当然である。このような眼鏡店の対応に思い当たる保護者は、多いと思うし当惑のあまり問い合わせもかなり多く相談を受ける機会が多い。
親は、「多分目に合わせてくれた」と眼鏡店に期待するが、目とレンズ中心が合っている確かめただろうか?殆ど100%「誰も確認していない」のが現実であろう。子供の目とレンズの光学中心の一致を眼鏡店であなたは確認しましたか?
眼鏡店すら難しい作業
眼鏡店における目とレンズ光学中心合わせは習熟した者ですら難しい作業の一つに数えられ長年の課題でもある。多くの「中心不一致」の事故例をほとんど日常茶飯事のごとく杜撰な眼鏡を見ている。仮に大人のメガネユーザーに「レンズ中心を確かめたことがあるか?」尋ねても「ない」のが現実であり、ほとんどのユーザーは眼鏡の中心品質である「目とレンズ中心の一致を見て確認したことがない」。
大人であれば
多少の狂いであれば場合簡単なフレームを曲げるなどの調整で中心の狂いを補うことが出来る。調整後帰ってくる大人の感想は、「目が楽」「物がより良く見える」「色が濃く見える」などの見え方の改善を多く見ている。相手は「幼い子供」である。
大人の参考事例
現実はどうであるか下記実例を見ていただきたい。下記写真は他店(眼鏡専門店)における大人の遠近両用メガネの中心不一致のケースである。テストシール上グリーンの同心円は左右それぞれの白い角膜反射点すなわち瞳孔中心に合わせられるべきものである。
しかし残念ながら写真の通り目の中心にレンズ中心が合っていないことを見て分かると思う。これが現実である。因みにこのように中心不一致の眼鏡を掛けた場合、機能性レンズである遠近両用眼鏡は不快だけでなく「遠くも近くも見難く機能性が損なわれた」「無駄な買い物」であり、さらに長期使用により後天的な斜視を形成してしまい目の健康を損なうと言った次第である。
解決
では、この目と透明なレンズ中心の一致は確認することが出来ないのか?小生が眼鏡従事者の義務と感じ長年の研究課題を解決した技術は、特許庁・特許登録されている。これを準用すれば簡単に解決出来る。
中心の狂いの有るなしを簡単に見つける方法
一方レンズの中心が合っているかどうか確かめる簡単な方法は、下の写真のような方法でかんたんに検出できる。
レンズ中心の確認手順
1)原理
レンズ光学中心(プリズム矯正はプリズム負荷された地点を中心とする)は透明で目に見えないから、見えるようにする。
2)レンズメーター(眼鏡店にある)
レンズメータでフレーム上のレンズ中心を特定し印点する。
3)シールを貼る
印点された点を囲むよう中心の空いた同心円に着色されたシールを貼りユーザーが目視できるようにする。
4)自覚中心検査
弁えられるのであれば3~5メーター離れた白い壁やスクリーン上にユーザーは見える同心円の高さを左右片眼づつ遮蔽し高さが同一であるか?両眼で見た時同心円が一つユーザーの正面にあるかどうか?を確かめることにより「目とレンズ中心一致の確認」を行うことが出来る。
5)他覚中心検査
ユーザーが幼く弁(わきま)えることができない場合、多少の狂いがあろうと保護者が上記中心シールを眼鏡店に貼らせ子供の前に立って観察すれば中心が合っているか?合っていないか?を容易に観察することができる。
これら一連の検査は、さほど難しくない。眼鏡店が協力的であれば可能である。これはレンズの持つ「不透明な商品特性」を公正にユーザーに開示できる唯一無二の方法である。
眼科との付き合い方
一般的にドクターの患者に対する持ち時間は長くて15分程度しかなく仕方のないことである。聞いた説明や矯正視力などは診察後手早くメモを取り記録として残すこと。質問事項があれば次回診察日までに聞きたいことや、その後の経過などきちっと整理しまとめて手早くドクターに伝える。わからないことは何度でも聞く。
『新・医者にかかる10箇条』
(2)対話の始まりはあいさつから
(3)よりよい関係づくりはあなたにも責任が
(4)自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
(5)これからの見通しを聞きましょう
(6)その後の変化も伝える努力を
(7)大事なことはメモをとって確認
(8)納得できないことは何度でも質問を
(9)医療にも不確実なことや限界がある
(10)治療方法を決めるのはあなたです
医療現場で
処方後の医療現場でよくあることとして、机上の出来事のように検査員が処方箋と製作された眼鏡の諸元が単純に合っていればさっさと良しと済ませる場合が多い。しかし、幾ら作られた眼鏡の諸元が処方箋と合っていても「使用する子供の目の中心にレンズ中心が合っていなければ無意味」である。親は一歩踏み込み瞳孔中心にレンズ光学中心が合っているか確認を願い出、もし合っていない眼鏡を手渡されたのであれば眼鏡店を指導する必要がある。
せめて眼鏡を眼科に持参された場合、レンズメーターで中心を印点した眼鏡を装着させ、目視で瞳孔に合っているか確かめていただきたい。
街行く子どもたち
街を歩く時、歪んだ眼鏡を掛けて歩いている子供によく巡り合うが単純に中心の狂いが想像される。子供の目に合わない眼鏡を使っているケースである。保護者も子たちが眼鏡を歪んで掛けていれば時間をおかず眼鏡店で再調整を求めるべきである。
保護者はもっと積極的に確かめて
保護者は、眼鏡店が苦手な中心合わせを「店の信用」とか「眼科が紹介した」などの曖昧な事由はどうでもよく、子供の目とレンズ中心位置が合っているか誰がどのようなウンチクを言おうが「自分の目で確かめる」ことが望まれる。「・・・・だろう」で済まされない我が子の「視力」強いて言うならば目に及ぼす影響や健康に関わり合いがある。
副作用
目とレンズ光学中心が合っていない場合必要としない由々しい副作用の「不正プリズム度数」(中心が目と合わないことにより発生する)が生じ、説明の困難な違和感など不都合のまま放置するようでは弱視治療は遅々として進まなくなる。不同視などの場合、後天的な斜視を形成する危険性がある。
眼鏡は作った後の維持管理が大切
また子供達の眼鏡の使い方は一様でなく、いくら頑丈なフレームでも壊したり歪めたりする。眼鏡は、作って渡される時より後の定期的点検調整が重要、常に正しい状態で使用できるようにする事に留意されたい。
以上拙い知識ですが少しでも皆様のお役に立てればと願っております。
星野 龍一
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