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白内障手術後も残る見え方の不自由――強い上下斜位と両眼視を眼鏡で整える

完成したプリズム眼鏡(写真3枚)

強い上下プリズム遠近両用眼鏡の正面写真
完成した眼鏡の正面。外観とレンズの収まりを確認できます。
プリズムレンズの上面から見た厚み
上面から見たレンズの厚み。プリズム補正に伴う厚みの違いが分かります。
クサビ状のプリズムレンズ断面
斜め方向から見たレンズ断面とフレーム加工の様子。

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めがねのホシノでは、見え方やプリズム眼鏡、遠近両用眼鏡についてのご相談を承っています。

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白内障手術後の見え方を、長年の処方記録と両眼視の観点から検討した事例をご紹介します。

白内障手術によって目の中の濁った水晶体が眼内レンズに置き換わり、視力が改善しても、「二重に見える」「左右の像がうまく重ならない」「長時間見ると疲れる」といった困りごとが残る場合があります。大切なのは、視力表で測る数値と、両眼で快適に見る機能は同じではないという点です。

視力1.2~1.5は「両眼視力」

今回のお客様の記録にあるVA 1.2~1.5は、片眼ずつの視力ではなく、両眼で測定した視力です。数値が良好でも、両眼の視線のずれや像の重なりにくさによる負担がないとは限りません。視力が出ることと、自然で安定した両眼視が得られることは分けて考える必要があります。

お客様自身が記録した術後の経過

今回の事例では、お客様がご自身で作成された白内障手術後の観察記録を持参されました。これは当店が作成した医療記録ではなく、お客様ご本人の体験と観察をまとめた資料です。長期にわたる度数の変化と、手術後の見え方を検討するうえで重要な手がかりとなりました。掲載についてはお客様のご了承をいただいています。

11年間の度数推移から考えること

眼鏡の調整では、その日の視力だけでなく、過去の処方や度数の推移、見え方の訴えを合わせて確認します。今回も11年間にわたる度数の変化を振り返りながら、術後に必要な補正を検討しました。長期の変化は、単に度数を強くする・弱くするだけでは解決しない課題を見つけるための材料になります。

2015~2026年 眼鏡処方の推移(11年間)

以下は当店の眼鏡処方記録を整理したものです。Sは球面度数、Cは円柱度数、AXは乱視軸、ADDは加入度数、BO・BD・BUはそれぞれプリズム基底外方・下方・上方を表します。プリズムの数値は処方量(単位:Δ)であり、斜位角そのものの測定値ではありません。

処方日 眼 S(D) C(D) AX(°) ADD(D) プリズム(Δ)
2015年7月27日 右 -9.00 -0.75 115 +0.88 BD 2.50
2015年7月27日 左 -5.75 -0.75 125 +0.88 BO 1.00/BU 2.50
2023年7月26日 右 -8.50 -2.75 115 +3.00 BO 1.50/BD 6.50
2023年7月26日 左 -4.50 -0.75 120 +3.00 BO 1.50/BU 6.00
2026年4月24日 右 -0.75 -0.75 125 ― BO 2.00/BD 6.50
2026年4月24日 左 -1.00 -0.75 140 ― BO 2.00/BU 6.50
2026年9月9日 右 0.00 -1.00 120 +3.00 BO 3.00/BD 6.75
2026年9月9日 左 -0.75 記録なし 記録なし +3.00 BO 3.00/BU 6.75
2026年10月5日 右 0.00 -1.00 120 +3.00 BO 3.00/BD 6.75
2026年10月5日 左 -1.75 記録なし 記録なし +3.00 BO 3.00/BU 6.75

2015年のPDは67mm、2023年および2026年の記録は66mm。2023年は中近用累進、2026年4月は術後の暫定的な単焦点眼鏡、同年9月は両面非球面の遠近両用眼鏡です。10月5日は左レンズのみ無償再製作し、右レンズは変更していません。2026年9月以降の左眼のC・AXは元の記録に記載がないため、推測で補っていません。

お客様が持参された「見え方の記録」を読みやすく整理

以下は、お客様ご本人が2026年4月28日~5月29日に作成された術後の観察資料から、主要な記述を日付順に要約したものです。医療機関の検査記録ではなく、お客様の主観的な見え方やご自身で試された結果です。

  • 4月28日:術後の単焦点プリズム眼鏡を掛け始める。左右のどちらの目で見ているのか分かりにくいような違和感を記録。右眼の見え方についても気になる点があった。
  • 5月2日:両眼で見ている感覚が出てきた一方、遠方では目を凝らす必要があり、近くの手元も見にくいと記録。
  • 5月8~9日:眼科での経過確認や点眼薬の変更について記録。術後の見え方に関するご本人の観察も続いていた。
  • 5月17日:文字の大きさと距離を変えて、左右それぞれのピントの合いやすい範囲を自分で比較。裸眼では手書き約4mmの文字について左眼約30~120cm、右眼約50~120cm、印刷約6mmの文字について左眼最大約165cm、右眼最大約205cmという記録があった。単焦点眼鏡では小さい手書き文字が左眼約50cmから、右眼約130cmから見やすいと記録している。

これらの距離はお客様が日常環境で独自に確かめた値であり、標準化された屈折検査や調節機能検査の結果ではありません。しかし、左右の見え方の違いや、どの距離で不便を感じていたかを知るための有用な手がかりです。

術後の眼鏡調整――2026年4月から10月まで

2026年1月に単焦点眼内レンズによる白内障手術を受け、4月24日に単焦点の暫定眼鏡を製作しました。術後の見え方が安定していく過程で、お客様の記録を参照しながら、遠近両用への移行を検討しました。

9月9日には、上下方向に片眼6.75Δずつのプリズム処方を含む遠近両用眼鏡を製作。右眼側の見え方は良好でしたが、左眼側ではピントの合う距離に違和感が残りました。そこで10月5日に左レンズの球面度数をS-0.75DからS-1.75Dへ変更し、無償で再製作しました。

最終的に確認されたVA 1.2~1.5は両眼視力です。約1か月後の確認では、お客様から「さすが星野さん、ありがとう」と喜びの言葉をいただきました。視力値だけでなく、日常での使いやすさを確かめながら調整を重ねた事例です。

なぜ白内障手術後にも両眼視の調整が必要なのか

白内障手術は主に目の中の光学的な濁りを取り除く治療です。一方、左右の目が同じ対象を見て像を一つにまとめる働きには、眼位や眼球運動、脳による像の統合などが関係します。したがって、手術そのものが成功しても、もともとの斜位や両眼視の負担が残ったり、術後に気になり始めたりすることがあります。

とくに上下斜位が強い場合、左右の像の高さのずれを補うために目の働きに負担がかかることがあります。適応がある場合は、プリズムレンズで光の進む方向を変え、像を合わせやすくする方法を検討します。ただし、プリズム量や効果は個人差が大きく、すべての複視や疲れ目に有効とは限りません。

強い上下プリズムと遠近両用レンズの製作

今回の眼鏡は、強い上下方向のプリズム補正と遠近両用の機能を組み合わせたものです。プリズムが強くなるほどレンズの厚みの偏りが大きくなり、フレーム選びや加工、装用位置の調整が重要になります。写真では正面からの仕上がりだけでなく、レンズの厚みとクサビ状の断面もご覧いただけます。

専門店が重視するのは「視力の数字」だけではありません

両眼視を考えた眼鏡調整では、左右それぞれの屈折状態に加え、両眼での見え方、像のずれ、日常生活で困る距離や場面、装用時の負担などを総合的に確かめます。遠近両用では視線の向きやレンズ内の使用位置も重要です。実際の見え方を確認しながら、無理の少ない補正を目指します。

なお、手術後の新たな複視や急な見え方の変化は、眼科で原因を確認することが先決です。眼鏡による補正は医療的な診断や治療に代わるものではありません。

まとめ――手術の成功と、快適な両眼視は別の課題

「白内障手術が成功しても、眼鏡による両眼視の調整が必要な場合がある」。今回の事例が伝えるのはこの点です。両眼視力が1.2~1.5あっても、左右の像を無理なく一つにするための補正が必要なことがあります。術後の見え方に違和感が続く方は、眼科での確認とともに、両眼視を考慮した眼鏡の相談もご検討ください。

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