貰った処方箋はしっかりと理解しましょう

 貰った処方箋はしっかりと理解しましょう

このケースは目とレンズそれぞれの「中心」が合わない場合、ユーザーである子供が説明出来ず起こりうる「危険性」のある問題について述べる。保護者が少しでも処方箋を理解しその予防になればと願って話を進めます。

危険性

このケースでは左右の度数タイプが異なり度数差が大きい(不同視と呼ぶ)。眼鏡がズレ下がると左右の目で物を見た高さが同じでなく、この高さ差を目の外側の眼外筋が追尾する時目に得体のしれない眼痛や頭痛を引き起こす危険性がある。さらに眼鏡をズレたまま長期掛けていると後天的な上下斜視を形成してしまう恐れがある。子供はわけも分からずその苦痛に耐える場合が多々あり、我々眼鏡従事者は正しい光学知識とがん整理を理解しこれを防止する義務と責任がある。消費者が飛び付きやすい「セット価格12000円」やユーザーの目の位置を測定せず「ユーザーが持参した処方箋通り」だという理由などは、免罪符にならない。

ユーザー

大阪市内在住 6歳 女児

眼鏡目的

弱視等治療用眼鏡

眼鏡の品質とは

保護者の殆どは、メガネにまつわる光学的な知識は無く単純に処方箋を眼鏡店に持ち込めば間違いなく弱視治療に合う眼鏡を求められると信じています。

しかし本サイト各所で警告している通り、レンズに度数があれば一点の光学中心があります。一方レンズは透明なため「商品透明性が無く」眼鏡の品質は小売店のレンズ加工で形作られいると言って過言ではない。

眼鏡の一番大切な品質とは「レンズと目の中心一致」であることを知りません。子供の目に大きな影響を及ぼす品質確認は殆どの眼鏡店のどこもしていません。眼鏡レンズはよく見える一方で目に悪影響を及ぼすサイドエフェクト(副作用)があることを知らない。これを確認し子供を護る必要があります。

処方箋を手渡される時

専門知識を持つ眼科でドクターや検査員から詳しい説明を聞くことが出来ればよいのですが、眼科でも患者や保護者に説明する時間は診察の関係上おおよそ15分程度しかなく十分な説明がしたくてもできないのが現実。処方箋を持ち込む眼鏡店の店員等に聞いて「どういう性質の眼鏡」で「何に気をつけるか」質問し説明を求め対処するのも方法かと存じます。


眼科処方箋

 

眼科処方箋

眼科処方箋

説明

この処方の特徴(処方箋よりは「弱視等治療用眼鏡給付申請書式」の方が詳しく書かれている

理解してほしい部分を赤線で囲ってあります。↑

R= 裸眼 矯正0.7XS+4.00

L= 裸眼 矯正1.0XS-3.50C-0.50A160

遠用瞳孔間距離(右と左の目の中心間距離)=58.0mm

①右と左で屈折度数のタイプが右「プラス」S+4.00で左「マイナス」S-3.75で、左右の度数乖離が球面等価値※で見た場合約7.75ディオプターであること。眼鏡技術者はかなり注意を要する度数である。

時々他店で眼鏡を買った保護者から「メガネフレームと処方箋だけで作ってくれた」と言う話を聞いて魂消ることがあります。目の位置は測定しないで合うはずは絶対有りません。

※球面等価値とは(屈折度数を比較する時わかりやすくなるので、乱視を球面度数に変換。乱視度数を2で割ると球面等価値になります)

②RV=  (0.7XS+4.00D後は空欄) (RV=right Vison)

右目:カッコ内はテストフレームによる矯正視力を表し、テスト用遠視性レンズS+4.00Dで矯正視力 0.7である。 Dはいずれもディオプターを表す。

 LV=  (1.0XS-3.50D C-0.50D AX160°

左目:同様に、テストフレームで 近視性乱視で球面度数S-3.50D 乱視度数C-0.50 Ax160° 乱視軸方向160度 のテストレンズ矯正視力 1.0である。 

③備考欄 「右 不同視弱視」 (診断名)


この処方の特徴と何に気をつけるか?

このケースでは、左右の「度数乖離」(右目と左目の度数差)が上で述べたように左右の度数乖離が球面等価値で見た場合約7.75ディオプターである。

見逃してはならない日常起こりやすい眼鏡のズレ

仮に、目の中心とレンズ光学中心が何らかの理由でメガネフレームが1cmずれ下がるだけで、左右それぞれで見る対象物の位置が上下にズレてしまいます。専門的には上下の不正プリズムが生じると言い、見ようとする対象物の像が子供から僅か1mのところで両目を開けてみた時高さにおいて7.75cm差が生じることを意味します。

このような場合一般的には、最初「目の奥が痛い」とか「頭痛」が生じ見ようとするものは「ボヤケて見えにくい」などの症状を訴える場合があります。この状態で眼鏡を掛け続けると目が上下にズレてその差を補う後天的な「上下斜視」を形成してしまう危険性があります。無論弱視治療は遅れ、説明のできない子供は「メガネを掛けなくなって」しまいます。

眼鏡はよく見える反面、レンズにはこのような危険性・副作用を裏腹に伴うものです。

使用方法を誤ったり、仮にそのような状態になった場合小さなユーザーは得体のしれない「苦痛」を目の奥に感じやがて「頭痛」が生じていても訴えられない可哀想な状況に置かれている場合があり我々や保護者は子供の様子に注意する必要と義務があります。

どのように防ぐか

 

星野式ワンハンド検査法

星野式ワンハンド検査法

遠くを見る時

具体的にこのようなケースでは、日常メガネを装着した直後5メータほど離れた場所にある水平な窓枠など見させ、年齢や知能的にある程度弁えることが出来るのであれば高さが同一で有るか上記の方法で確かめて下さい。子供が幼くて弁えることが出来ないときなどは、眼鏡の調整の不具合から違和感や「眼鏡を嫌がる」「すぐに外してしまう」場合一度この点を改めて下さい。高さが同一でなければ直ちに眼鏡店に行き調整を求めて下さい。光学中心と目の「中心一致」は、正しく維持する必要があり、保護者が調整することはほとんど無理です。

近くを見る時

またレンズ中心を外れる「近く」を見る時、紙に水平線を引き上記の方法で左右の目で上下するかどうか確かめ、ズレている場合顎(あご)を引かせできるだけレンズ中心で近くのものを見させる習慣をつけさせる必要があります。この点は指導を必要とします。

当店の場合はどの子供を含めた大人でも「定期点検」(一部特許技術)を取り入れて実施します。また度数の程度や内容により期間を短縮するなど柔軟対応しています。

この問題に関しては、この定期点検以外に他に防ぐ方法は有りません。

眼鏡装着の強要は絶対にしない

また説明ができない幼い子達が「眼鏡を嫌がる」「すぐに外してしまう」場合、保護者がしてはならないこととして「眼鏡の強要」を躾(しつけ)として行うことはやめていただきたい。先に何がメガネを掛けない原因になっているか突き止め解決することが優先。子供に無理をさせてしてしまうと精神的なトラウマを作ってしまい、実際に百貨店で購入した例でレンズと目の中心不一致が原因の眼鏡で装着を嫌がりトラウマが出来、再度眼鏡にチャレンジするのに精神的ケアーが必要になったケースが直近であった。

時間との競争

眼鏡を忌避し掛けなくなってしまうと「限られた年齢」すなわち年齢制限の有る「弱視治療」ができなくなり子供の将来に大きな禍根を残す危険性が有る。時期を無為に過ごしてしまうと以後取り返しがつかなくなる。


眼鏡製作の概要

 

目の中心測定

目の中心測定場面

 

フレーム上における目の位置関係

目の中心位置座標(フレーム上)

右 フレーム中心から30.0㍉ 高さ15.0㍉

左 フレーム中心から28.0㍉ 高さ15.5㍉

人の目の位置は天然

人の目の位置などは身体的特徴で機械的左右対称というのは比較的稀で、このケースも目の位置が右側へ変位している事が写真からわかる。

レンズの軽量化

ユーザーの目の中心位置座標とフレーム形状からレンズ設計を行い可能な限り軽量化を図っている。右側レンズは凸レンズのため軽量化を行わない場合6.1gで軽量化後2.4gまで減量。

 

レンズ厚と重量

レンズ厚と重量

 

レンズレイアウト

レンズレイアウト


レンズの厚みを薄く、レンズ軽量化

レンズの厚みを薄く、レンズ軽量化を図る場合、変えることの出来ない絶対的数値はユーザーの「瞳孔間距離」である。しかし保護者の選択肢としてフレーム選択を適正に行い目の中心がフレームリム空間ののほぼ中心に位置できるフレーム選択すればレンズを軽く軽量化することが可能になる。このような場合この点を説明し熟練した眼鏡技術者に頼めば適切なフレーム選択が可能な場合がある。

下図を見れば、目を中心にフレームの水平垂直線上位置はそれぞれの中心に来るよう選択したものを図から分かる。参考にされたい。この説明は別の例からの引用。

 

フレーム選択と目の中心位置

フレーム選択と目の中心位置

右レンズ S+4.00

 

右レンズ加工仕上がり

右レンズ加工仕上がり

 

斜めからの概要

斜めからの概要

 

子供メガネ正面からの概要

子供メガネ正面からの概要

 

上部からレンズ厚み観察

上部からレンズ厚み観察

 

左右レンズ見え方(度数の違い)

 

左右レンズの違い

左右レンズの違い

 

写真がボヤけて解りにくいかと思うが、右側は乱視のない遠視性、左は近視性乱視で乱視軸は直乱視(乱視軸170度)

1週間後の精密調整点検

 

1週後の精密調整後概要

1週後の精密調整後概要

 

違和感なく快適に使用できよく見える

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